以前もお伝えしましたが、2010年4月17日、中国政府はここ数年で最も厳しい不動産価格抑制策を発表しました。そのうち、3軒目住宅ローンの提供について制限を設定しています。しかし7月に入り、多くの地域で3軒目住宅ローンが一部の銀行でまだ行われていることが伝えられ、中国政府が不動産引き締め策を緩和するとの観測が浮上してきました。この顛末を簡単に説明すると、前述の抑制策では不動産価格が上昇しすぎた地域では3軒目のローンを禁じるとしていたのですが、具体的にどの地域かの指定がなかったため、地方銀行はその政策の隙間に付け入って、不動産価格上昇の著しい北京、上海、杭州などでも3軒目でもローンを提供する銀行があったのです。しかし、中国政府は、この引締め策緩和の観測に対して迅速に否定コメントを発表。また、3軒目の住宅ローンについて、中国工商銀行、農業銀行、中国銀行、建設銀行、交通銀行の五大国有銀行はともに提供しておらず、いつ再開するかも予測できないとしています。 以前も少しお伝えしましたが、現在の中国の不動産市況は取引量が大幅に減少している状況です。前述の抑制策によって購入側はもっと下がるのではないか?と様子見になる一方で、あまり不動産価格が下がっていないために購入希望価格と売却希望価格に乖離が生じ、様子見の状態が続いています。米国にADRを上場している、新築住宅の代理販売企業で中国最大手のE-HOUSE(証券コード:EJ)を7月頭に訪問しましたが、抑制策発表後、取引量が極端に落ち込み、4月の取引量を100とすると、5月は10か20。6月は25ぐらいまで回復してきたと言っていました。ちなみにE-HOUSEの新築販売における販売シェアは金額ベースで全国の2.5%に達し、万科企業(深センB株上場:200002)などの大手企業も同社に販売を依頼しています。このままいくと、2010年下半期の不動産企業の業績は大きく落ち込むことになります。不動産は資材やその他の産業にも多大な影響を与え、その国の経済に非常に大きな影響を与えますので、2010年下半期は中国の景気はスローダウンする可能性があります。株価は半年ほど景気に先行して動きますが、このスローダウンの可能性を見て、上海A株は下落を続けてきたのだと思います。
では、今はどういう状況かとE-HOUSEの経営陣に聞くと、2010年下半期に発売される新築住宅の価格がどのあたりまで引き下がるかに注目が集まるところだといいます。これはE-HOUSEの予測ですが、もしも15-20%引き下げられれば、値頃感から取引量が回復し、しかも政府も追加の引き締め策を出す必要がなくなるだろうということです。この場合ソフトランディングで再び景気拡大路線に戻ります。ただ、不確定要素もあって、4月の中国(中央)政府抑制策の発表後、実際の政策を発表・遂行する地方政府は、それに対応した抑制策を出しているところと出していないところがあって、これから(地方政府の)抑制策が出てくる可能性がある。また、固定資産税がこれまでは法人に対してのみ、年間0.84%かかっていたものが、今度は個人にも課税する新税制が発表される可能性がある。とのことでした。ともあれ、2010年下半期の不動産市況がどうなっていくのか?というのは中国経済・中国株にとって大きなターニングポイントとなりますので、注目しておく必要があります。ただ、直近で不動産株や、銅や鉄などの資源株が反発を開始しているのを見ると、市場全体もE-HOUSEと同じような見通しの方に傾きつつあるのではないかと、期待も持てます。