日経平均が2万4000円を越える水準まで上昇し27年ぶりの高値をつけたのは今月2日のことである。そこからわずか20日で2000円も下げた。株価というものは企業価値を評価して決まる。1カ月も経たないうちに企業価値が1割近くも吹き飛ぶなどということはありえない。日経平均の予想EPSは相変わらず最高水準にある。この間の下げはセンチメント(市場心理)の悪化以外のなにものでもない。

何がセンチメントを悪化させたか。まずは米国株の急落であった。米国株の急落は米国の長期金利上昇に対するバリュエーション調整であり、それは極めて合理的である。ただ、その下げに日本株が連れ安するのは合理的でない。

そのほか通商摩擦、中国景気の減速、サウジアラビア記者殺害を巡る緊張、中距離核戦力縮小条約破棄を巡る米露の対立、イタリアの財政懸念、etc. どれも本質的には日本株のファンダメンタルズに大きく影響を及ぼすものではない。

いちばん、つまらないのがVIX指数の上昇を理由にするものだ。株が下がったからVIXが上がったのであって、その逆ではない。因果関係が反対である。ただ、リスク・パリティ戦略をとる運用にとってはエクスポージャーの縮小が要求されるので、いったんボラティリティが上がると、断続的な売りが出て従来以上に調整が長引くということは言えるだろう。

米国金利の上昇で米国株が下げるのはわかるが、日本株はまったく状況が異なる。日経平均の予想PERはアベノミクス開始以来の低水準。最低は3/23の12.22倍である。2万2000円は現在の予想EPSではPER12.70倍だが、現在の予想EPSは減益見込みである。このところ川重やダイヘン、そして今日のLIXILグループなど下方修正が続いているが、あくまで上場企業の一部に過ぎない。大半の企業は好業績が続いており、今回の決算で業績見通しは上方修正されるだろう。

保守的にみてEPSの伸びゼロ、前期対比横ばいとの仮定を置くと、EPSは1800円。2万2000円はPER12.22倍とアベノミクス開始以来の最低値に並ぶ。現在がいかに割安か、陰の極か、ということである。