上海に視察に行ってきました。企業訪問もしたのですが、不動産の状況についても調べてきましたので、今回はそのあたりをお伝えしようと思います。ご存じのように中国の不動産価格は高騰しています。特に上海と北京は過熱している印象です。たとえば、今回は上海の中心部から車で40~50分程度(地域のランク的には高級でもなければ低級でもない)の130平米ほど(中国のマンション面積は、壁なども面積に含めるなどの原因によって、日本の面積よりも15%ほど少ない。そのため、日本の面積で言えば130平米÷1.15=113平米といった感覚)のマンションにお邪魔したのですが、その場所でも、現在平米3万元程度で取引されているとのことでした。仮に100平米なら、1人民元=13円で計算すると、100(平米)×30,000(元/平米)×13(円/元)=3900万円という計算になります。もちろん、このマンションは特別なマンションではなく、ごくありふれたマンションで、周辺を見渡せば大量に存在するようなマンションです。ということは、それだけ4,000万円程度の資産を抱える人が中国にいることになりますから、これは凄いことだと感じました。
もっとも、このような、急激な不動産価格の高騰は上海と北京などのごく一部の都市に限ったことです。たとえば大連などでは平米10,000元以下のマンションが普通で、これだと100平米でも1,300万円ほどです。ですから、上海と北京は、日本で言えば、港区や渋谷区のようなものかもしれません。実際のところ、上海の年収は中国平均よりも非常に高いのです。中国全体の1人あたりGDPは3,000ドルを超えたばかりですが、上海だけに限って言えば10,000ドルを既に超えています。上海ですと、大卒の会社員で30才ぐらいであれば、月収20万円程度もらっているのも普通です(もっとも中国では平均という概念が非常に捉えにくくて、一概に言えないのですが、あくまでも参考例として)。ですから共働きで年収400~500万円程度という人も多数存在します。そして、そういう世帯の人がどのようにマンションを買っているのかというと、1人分の年収を全て返済に廻すような住宅ローンを組んで、不動産を購入します。日本人の感覚からすると危険な感じもしますが、基本的にはこれまで中国の不動産価格はずっと右肩騰がりでしたから、大きな問題にならなかったし、中国人からすると、日本人のリスク管理は、逆に慎重すぎるといった感覚のようです。ただ、住宅ローンの返済は庶民にとってやはり辛いもののようで、中国では「房奴」(住宅ローンのために奴隷のように働く住民)という言葉がよく使われます。
いずれにしても上海の普通のマンション100平米のマンションが4,000万円程度の値段がついているわけです。バブル期の日本と比べるとまだまだ安いですが、現在の東京よりも高い感覚だし、中国の年収から考えれば非常に割高な水準と言えます。しかも現在、人民元は割安に評価されていますから、仮に人民元を30%切り上げて計算すると上海の100平米のマンションは5,000万円になるという考え方もできます。だからこそ、そろそろ歯止めをかけておかないと日本のバブルのようになるという懸念から中国政府は厳しい不動産規制策を発表しているわけです。そして、この規制策発表後は、やはり様子見で取引量は縮小しています。取引量が少ないため、現在の不動産価格は正確には把握し辛いのです。しかし、下半期から発売される新築マンションの価格がどのように設定されるかというのは1つのバロメーターとなりそうで、2~3割程度価格が引き下げられるのではないかという予想が多いように感じました。ただ、そこまで下がると、中国には不動産をまだ買えていない人が大量にいるために、実需が買い支えて、そこから値段がズルズルと下がり続けるようなこともないと、同時に感じた次第です。