このレポートのまとめ

  1. 米国株式投資ストラテジー
  2. 「中国のテスラ」ニオについて

米国株式投資ストラテジー

米国企業の第2四半期決算が出揃いました。S&P500指数採用銘柄の一株当たり利益(EPS)成長率は第1四半期に引き続き前年同期比+25%をクリアしました。

 

EPSのポジティブ・サプライズ(=実際の結果がコンセンサス予想を上回る事)の比率は80%でした。これは過去最高でした。ちなみに過去5年間の平均値は70%でした。

しかし世界に目を転じると、折からの貿易紛争で、諸外国のセンチメントは悪化しています。特に中国は米中貿易戦争の先行きに対する懸念から株価が低迷しています。

世界の投資資金は米国に一極集中する様相を呈してきており、潮が引くように投資資金が逃げている一部の新興国では通貨不安も出てきています。

これと対照的にドルは基調として強いです。このことは海外売上比率の高い企業には為替面での逆風が吹くことを意味します。

いまS&P500指数採用銘柄の海外売上比率は38%です。するとこの部分はリスクに晒されることになります。

このため投資家の中には(海外売上比率の高い大企業の株を避け、アメリカ国内からもっぱら売り上げている小型株を買おう)という機運が高まっています。

さて、米国の中小企業の利害を代表するNFIB(National Federation of Independent Businesses)はスモールビジネスのオーナーの信頼感指数を集計しています。その「スモールビジネス楽観指数(Small Business Optimism Index)は8月に過去最高の108.8を記録しました。

 

また将来の先行きを占う「スモールビジネス見通し指数(Small Business Outlook Index)指数も強いです。

 

米中貿易戦争は長期戦になると見られるため、上に述べたような構図は当分の間続くと予想されます。したがって中小型株への資金配分を増した方が良いでしょう。

ニオについて

先週から中国の高級EV(電気自動車)メーカー、ニオ(NIO, Inc.)がニューヨーク証券取引所に上場されています。ティッカーシンボルはNIOです。同社株は初値レンジの下限に近い6.26ドルで値決めされました。上場初日は5ドル台に落ちる局面もありましたが、これを書いている9月13日(木)現在、値決め価格を上回る$9.15で取引されています。

中国政府は大気汚染防止の一環としてEVを奨励しています。政府はメーカー各社に対し「生産するクルマの1割はEVにすること」と通達しているほか新規のガソリン・エンジン車の工場の建設は認めない方針です。さらにガソリン・エンジン車を所有する認可(ライセンス・プレート)は「くじ引き」制となっており、消費者が確実にクルマを所有したいと思えばEVを買うほうが早いです。またEVには政府の補助金が出ます。ニオの主力製品である「ES8」の場合、1万1千ドルもの補助となります。

中国の自動車市場は1. エントリー、2. ミッドレンジ、3. プレミアムの三つのカテゴリーに分類されます。

 

向こう5年でエントリー市場は年率+3.9%で、ミッドレンジ市場は年率+4.5%で、プレミアム市場は年率+12.4%で成長すると予想されています。つまりプレミアム市場が最も急成長するのです。

エントリー市場でEVを出している企業はBYD、GAC、SAICなどです。ニオはプレミアム市場に属し、価格帯で言えば6万から8万ドルの価格設定です。ちなみにテスラは高い輸入関税を課せられるので12万ドルくらいします。殆どの消費者には手が届きません。

 

ニオの主な競合他社をまとめると下のようになります。

 

次に中国市場でどの車種が今後売れるかの予想を見ると下のチャートのようになります。

 

向こう5年の成長率はセダンが年率+1.9%、SUVが+9.4%、多目的車が+0.7%です。つまりSUVが最も急成長すると見込まれています。NIOの主力製品は「ES8」というSUVです。同社がSUVに特に力を入れている理由は上のような需要見通しに立脚しているからです。

中国のEV市場は既に世界最大です。

 

2022年にかけて中国のEVがものすごく増えると予想されている点に注目してください。

ニオは中国で初めてオリジナルのEVを出した会社です。過去3年に「フォーミュラE」、「EP9」、「ES8」、「ES6」、「ET7」などを次々に発表しました。同社は実際の生産をアウトソースしているため現在の従業員は7千人と少ないです。

同社は中国国内に80ヶ所チャージステーションを展開していますが、2022年までにこれを500万ヶ所に増やす予定です。現在の主力はSUVの「ES8」です。これは同社初の量産車です。「ES8」は居住性の良さを誇っています。またNOMIスマート・スピーカーを搭載しており、これは消費者にたいへん好評です。

「ES8」の納車は6月から始まったばかりです。これまでの生産台数は僅か2,200台です。その関係で2018年上半期の売上高は695万ドル、利益は5億ドルの赤字でした。言い直せば、同社の損益計算書は現状では大赤字になっています。