このレポートのまとめ

  1. FOMCでは大方の予想通り0.25%の利上げが発表された
  2. フォーワード・ガイダンスは削除された
  3. 米中貿易戦争の影響は未だデータには表れていない
  4. 日米首脳会談の対話は良い感じで続いている
  5. 米中対話の欠如と好対照
  6. 9月24日から対米追加関税が発動された
  7. 今後消費財への関税が増える

連邦公開市場委員会

FOMCでは大方の予想通り0.25%の利上げが発表された

9月26日、2日間に渡る連邦公開市場委員会(FOMC)が閉会し0.25%の利上げが発表されました。経済予想サマリー(SEP)では2020年までのFFレートの予想は前回と不変でした。

 

フォーワード・ガイダンスは削除された

今回、声明文ではフォーワード・ガイダンスが取り止めになりました。ジェローム・パウエルFRB議長は記者会見の中でフォーワード・ガイダンスをやめてもFRBの方針には変更は無いとコメントしました。

米中貿易戦争に関して記者団から質問が出た

米中貿易戦争の影響は未だデータには表れていない

米中貿易戦争の影響に関してはFOMC声明文の中で言及はありませんでした。

記者団の質問に対しパウエル議長は「地域連銀は地元企業と密に連絡を取り合っている。企業からは色々な懸念の声を聞いている。しかしデータを見る限り、まだ悪影響は表れていない。関税による物価上昇が懸念されているが、それは未だデータに反映されていない。今後物価が上昇しはじめるシナリオもあるかもしれないが、それが一過性のものか、恒常的なものかを見極める必要がある」とコメントしました。

日米首脳会談

日米首脳会談の対話は良い感じで続いている。米中対話の欠如と好対照

9月25日の国連総会の後、安倍晋三首相はトランプ大統領と夕食を共にしました。日本が懸念していた日本車に対する輸入関税は回避されました。

重要なことは、日米首脳は大変頻繁に連絡を取り合い、絶え間なく意見の調整をしているという点です。これは中国と米国がお互い自分の立場を主張しあうだけで中身のある対話を殆どしていないことと際立った対比を見せています。

米中貿易摩擦

9月24日から対米追加関税が発動された

米国は24日に通商法301条に基づき中国からの輸入品2,000億ドルを対象に10%の追加関税を発動しました。(ちなみに去年米国は中国から5,060億ドルに相当する物品を輸入しています)

中国も米国からの輸入品600億ドルに関税を課す報復措置を発表しました。(ちなみに中国は去年米国から1,100億ドルに相当する物品を輸入しています)

 

過去の経緯を簡単にまとめると、米国は4月3日に500億ドルの対中関税を発表しました。実際の施行に際しては二回に分け、7月6日に中国から輸入される340億ドル相当の品目に、そして8月23日に160億ドル相当の追加品目に対しそれぞれ25%の関税をかけると発表しました。中国は6月18日に500億ドルの対米関税(25%)を発表しています。

米国の関税率10%は、当初考えられていた20%より低かったこと、報復措置としての中国側の関税も対象範囲がそれほど広範でなかったことなどから市場関係者は安堵しました。

 

今後消費財への関税が増える

しかし貿易戦争はこれで終わったわけではありません。たとえば22日に予定されていた事務レベルでの米中通商協議は取りやめられました。双方の対話の欠如が印象に残ります。

今回米国が発表した中国製品への関税は米国の消費者に直接影響が出る品目を含んでいます。これに対し、過去に米国が発表した関税は原材料など米企業の仕入れコストに影響するものが多かったです。

今回中国が発表した報復関税は素材、資本財など広範にわたっています。前回までの関税は農産物、自動車などピンポイントでした。

今後、アメリカがさらに関税をエスカレートする場合、もう既に中間財には関税をかけてしまっているので、おのずと資本財や消費財の比重が高くなると予想されます。

 

さて、アメリカはめくらめっぽう中国製品に関税をかけまくっている印象を与えますが、実は段階を追って粛々と進めています。

去年8月、まず中国のアンフェアな貿易行動に対する事実調査が実施されました。

今年3月にアメリカ合衆国通商代表部がその報告書を提出しました。そこでは米企業が中国でビジネスする場合、JV(ジョイントベンチャー)を作る事を余儀なくされていることで技術をぬすまれていること、米国の知財を中国が利用する際、それに対してフェアな対価をもらっていないことなどが指摘されました。

際立つ点としては、トランプ大統領はUSTRに任せ、自分自身は交渉の進め方や最終的な展望に関しては殆どコメントや指示を出してない点です。ツイートはたくさんしていますが、最終的に中国側からどういう譲歩を引き出すかということに関しては手の内を見せてないのです。

大統領からそれに関するシグナルが出てないので、USTRは規定のコース(=だんだん貿易戦争をエスカレートする)をそのまま走っているというわけです。