今週もドル高円安が進み、7月12日の正午過ぎの米ドル/円の為替レートは1ドル=137円台前半と約24年ぶりの円安水準となっています。
日銀の金融緩和の継続と米国の金利上昇によって、金利差拡大からの為替相場の円安トレンドが続くことが予想されています。
円安の動きに注目が集まる中で、金融商品として為替取引に活用することを検討したいのが、FX (外国為替証拠金取引)です。
FXのメリットとリスク
他の外貨商品と比較したFXのメリットは、何といっても取引コストが低く、売買がしやすいということです。
FXの為替手数料はほとんどの会社でゼロとなっています。取り扱い会社の収益は売りと買いのレートの差(スプレッド)だけで、多くのFX専業会社ではそのスプレッドも米ドル/円で0.2銭程度となっています。
これは大手銀行の外貨預金の為替手数料と比較すれば圧倒的な低コストです。
またFXは、ほぼ24時間いつでも取引することができ、その時のリアルな為替レートで売買することができます。そもそも為替マーケットは取引ボリュームも大きく、流動性は極めて高い市場です。
一方で、リスクとして為替レートは24時間刻々と変化するため、就寝中などレートを確認できない間に相場が急変する可能性があります。また、投資元本に比べて大きな金額の外貨取引が可能なため、投資元本に比べて大きなリターンが期待できますが、半面、投資元本以上の損失を被る場合などもあります。
そのようなFXの活用法には、大きく3つのポイントがあります。
1.外貨の買いポジションで外貨資産の比率を高められる
1つ目の使い方は、ポートフォリオ全体の外貨資産の比率を高めるために活用することです。
日本人の資産配分を見ると、円資産に大きく偏っており、外貨比率が低すぎるという問題があります。私は円安か円高かの予想ができない五分五分の状態なら、円資産と外貨資産を半分ずつ保有するのが合理的だと考えています。円資産に偏った資産配分は、円高を想定する人が取るべきポジションです。
しかし、外貨資産を増やす必要があることがわかっていても、外国株式や海外不動産は銘柄選択が必要で、価格下落のリスクもあり、簡単に購入することができません。
FXであれば為替の取引だけが切り離されているため、直接的には株価や不動産価格の影響を受けません。
そのため、どの外貨資産を買ったら良いかわからないが、とりあえず外貨資産の比率を引き上げたい場合、最適な外貨投資対象と言えるのです。
2.外貨資産の為替ヘッジにも活用できる
2番目の使い方としては、既に保有している外貨資産の為替ヘッジに活用することです。
例えば米国株式を保有していて、円高になると判断した場合、株式を売却すれば為替リスクを抑えることができます。しかし、株式の売却にはコストがかかりますし、利益が出れば税金もかかってきます。
そもそも為替は円高を予想しても、株価に対して強気の見方をするのであれば、株式は売らないに越したことはありません。
このような場合、米国株式を保有したままで、FXの米ドルの売りポジションを作ることで円高に対応するヘッジ取引ができます。
円高にならないと判断した時点でFXの米ドル売りのポジションを買い戻せば、為替だけの取引を行うことができるのです。
これは株式だけではなく債券や不動産でも同じように活用することが可能です。
3.短期のトレーディングは“ゼロサムゲーム”
3つ目の使い方は短期のトレーディングです。FXは取引コストが極めて小さく、動きが激しいことが多いので、短期間に売買を繰り返すトレーディングによく使われます。
しかし、私はこの3番目の使い方に関しては否定的です。なぜなら、為替の短期的な値動きを予想して、売買するのは確率的には成功する可能性が低いからです。
為替取引とは、異なる2通貨の交換に過ぎません。自分が売買する時には、逆の取引をしている相手方がいて、2つの利益の合計はゼロです。つまり、取引を繰り返せば繰り返すほど、儲かりにくくなっていき、スプレッドの存在によって最終的には損失が発生する可能性が高いのです。
今後さらに円安が進むのか、あるいは円高に巻き戻しが起こるのか、為替の動きを予想する事は簡単ではありません。
相場を当てにいくのではなく、アセットアロケーションの観点から外貨資産を資産全体の50%を基準に考える。その中でFXを上手に活用していけると良いと思います。