いよいよ人民元切り上げが動き始めました。そこで今回は、この切り上げの波をうまく捉える方法を考えてみたいと思います。まずはおさらいとして、これまでの人民元の動きを確認しておきましょう。人民元は長らく1米ドル=約8.28元の固定相場制が続いていました。しかし、世界各国から人民元レートが低すぎるとの批判が高まり、2005年に管理相場制への移行を発表しました。その後、2008年半ばにかけて1米ドル=6.82元程度まで、つまり約2割程度、人民元のドルに対する上昇が続いてきました。しかし、金融危機の影響で輸出企業が大打撃を受けたことがあり、輸出企業支援策の一環として2008年7月からは再び1米ドル=約6.83元の固定相場に戻されていました。

結果として中国は輸出が急激に回復したにもかかわらず人民元を安価に保てたので、金融危機後の世界経済の立ち直りの中でも、突出したV字回復を果たし、世界経済を牽引するまでになりました。しかし、さすがに景気回復も軌道に乗ってきたし、そろそろ緊急措置的なドルペッグをやめるように促す国際的な批判が高まっています。4月8日にはガイトナー米財務長官と王岐山副首相との、米中財務トップ会談が急遽実施され、人民元のレートもそれを境に徐々に切り上がってきています。ちなみにこの会談の数時間前に中国人民銀行(中央銀行)の顧問である夏斌氏が「管理変動相場制を早期に再開すべき」との意向をコメントしていました。その一方で夏斌氏は「急激な人民元レートの上昇は利益を生まない」ともコメントしており、今後は緩やかな人民元上昇が継続することが予想されるところです。

では、今後期待される人民元上昇でメリットを受ける株とはどのような銘柄でしょうか。まず思い浮かぶのは、売上は人民元ベースで借入れやコストが外貨である銘柄です。航空業界は外国からの航空機の購入などによって外貨の借り入れが多い業界ですから、人民元が切り上がると負債が圧縮される効果があります。それから、食品製造企業や製紙会社、輸入企業などは人民元の切り上げによって製造コストや仕入れコストが圧縮されます。また、人民元資産を大量に保有する銀行、土地を大量に保有する不動産銘柄なども人民元上昇によって外貨ベースの価値が上がりますから注目される可能性もあります。いずれにせよ、人民元の切り上げが始まれば、人民元の先高感を期待して中国に資金流入が始まる可能性もあり、中国株全体にとって大きなプラスですから、人民元が安価な今のうちに中国株に投資しておくのは良い選択なのではないかと思います。