2008年に打ち出された中国の総額50兆円を超える景気対策のうち、3兆円近い金額がエネルギーの効率化などへ投じられています。また次の5ヵ年計画(2011~2015年)では環境対策投資として39兆円を超える予算が現在開催中の全人代で検討されているようで、これは前5ヵ年計画(2006~2010年)の2.2倍の規模となります。中国は間もなく米国を超えて、世界最大の一次エネルギー消費国となります。一次エネルギーとは石油、石炭、天然ガス、水力、原子力ですが、特に中国は石炭の使用が全エネルギー構成のうち70%と突出して高いため、そして石炭の8割は原炭のまま燃焼されていたことで、深刻な環境汚染を引き起こしていました。このため、中国は現在世界最大の二酸化硫黄の排出国となり、中国の半分以上の都市では酸性雨があり、40%の中国の主要な湖や貯水池は工業・農業の排水の悪影響で使用できない状況です。しかし8%以上の経済成長を続けなければ失業者が溢れるなど、国としての運営がまずいことになりますので、省エネ・低成長モードに入るわけにはいきません。
つまり、中国が経済成長続けるためには、国際的にも環境対策に巨額の資金を投じ、最大限の努力を見せる必要があります。したがって中国の環境保護投資は次の10年間、増え続ける可能性が非常に高いと言えるのではないでしょうか。中国環境科学学会の王玉慶理事長によると、中国政府が「省エネ・エコ産業の発展計画」を2010年に発表する可能性が高いとのこと。王理事長は同計画が他の産業振興策と異なり、実施期間が限定されず、長期的な戦略して実施されていく可能性があり、重大な意義があるとコメント。王理事長によると、2010年、エコ産業の総生産高は1兆元を超え、GDPの3%を占めることになると予測しています。そして、2015年に2兆元になり、2020年には中国経済の基幹産業の1つになると予想しています。
我々投資家としては、この中国の環境産業拡大の波をうまく捉えて投資に活用していきたいものです。中国の環境関連株としては、下記の銘柄があります。まず、ゴミ焼却による発電と汚水処理が主力とする中国光大国際(0257)。同社は国務院系列の企業で山東省、江蘇省政府との関係が非常に良く、その事でさらなる仕事の依頼へと好循環が続いています。汚水処理では中国初となるグレード1Aという最上位を、ゴミ焼却発電についても国際スタンダードを維持する高品質サービスが強みです。それから中国水務(0855)。同社は水道水の供水が売上の7割を占めるメイン事業。長期的に中国の水需要は大きく膨らむ見通しであり、同社はその恩恵を受ける見込みです。ただ、現在は本業よりも、投資など、その他利益のほうが大きく業績は上下に振れやすくなっています。次に深センで約60%のシェアを占める環境企業である東江環保(8230)。工業廃棄物から銅を抽出し販売するのがメイン業務で、その他ゴミの埋め立てサービスも急成長。金属価格に左右されるが廃棄物処理需要は大きくなる一方で毎年20~30%の業績拡大を期待できます。そして、風力発電用ギア装置で中国最大手メーカー(市場シェア約8割)である中国高速伝導(0658)。中国の新エネルギー振興策の草案から類推すると風力発電は2020年までの20%の高成長続く見込みです。最後に天津で下水処理を行う天津創業環保(1065)。同社は売上構成がシンプルで本業に集中しており、利益率も高めで安定もしているのが強みです。他方、成長性が殆どみられないという難点もあります。