中国のワイン市場は近年高い成長が見られます。世界の平均ワイン消費成長率である1.5%に対して、2005年から2007年までに、中国ワイン市場は生産量ベースで年平均約24%増、販売額は年19%増で成長してきました。しかしながら国際ブドウ・ワイン機構(OIV)の2008年のデータによると、中国の一人当たりのワイン消費量は、わずか1リットルであり、世界平均水準である3.6リットルと比べても少ない状況で、大きな成長余地を残しています。このため、中国の所得水準の向上とミドルクラス層のライフスタイル変化により、ワイン市場の成長はGDP以上になることが期待されます。実際のところ、2005年から2007年までは、いずれも同期間における10%強のGDP成長率を大きく上回った成長を遂げています。そして、今後の予想についても、たとえば、国際市場調査機構のVinexpo/IWSRは、2008年~2012年、中国のワイン消費量が年間36%成長していくとの予想を出しています。
ワイン企業でいうと中国には約600社のワインメーカーがありますが、2008年時点の大手3社のシェアを見ると、中国本土B株上場の張裕ワイン(200869)が18%、中国食品(0506)傘下の長城ワインが14%、王朝酒業(0828)が7%となっており、大手3社で約40%のシェアを占めています。ちなみに張裕は売上高ベースで世界トップ10入りした始めてのアジアのワイン企業です。なお、張裕ワインは今後、ワインの原料であるブドウの栽培面積を2007年の約6,666ヘクタールから、2009年には新疆、寧夏で一気に合計8,000ヘクタールの栽培プロジェクトを獲得するなどして、2010年には16,666ヘクタールにまで拡大する計画があり、業績の拡大が期待されるところです。
その一方で、市場調査機関であるイギリスの「Canadean」社が発表した2008年世界飲料市場の研究レポートによると、世界景気後退の影響で、2008年の世界ワインメーカーのトップ10社のうち、8社はマイナス成長となり、上位10社の売上成長率は2007年の13.1%から2008年は-4.6%となっています。このように海外ワイン市場は飽和で低成長が続いているのですが、この影響を受け、特に金融危機以後は輸入ワインが値下げ攻勢で大量に流入したこともあり、中国国内のワイン市場の競争は一層激しくなっています。このような状態ですから、急成長の中国ワイン市場の恩恵を受けようとする場合、現在、既に大きなブランド力を有している前述の大手3社や、独特の強みを持つワイン企業や流通企業に注目するのがよいのではないかと思います。
大手3社以外では、業界全体では10位ですが、スイートワインではトップの通天酒業(0389)や、中国酒ではもっとも大きなシェアを持つ「五糧液」の最大手の販売代理企業で、フランス、イタリア、オーストラリアなど11カ国の21社のワインサプライヤーと200数種のワインの取引契約を結び(うちの40種は独占契約)、2年でワイン業務の売上構成を50%にまで拡大させる計画を持つ銀基集団(0886)などがあります。