先週末で6月が終わり、ドル/円の月足(6月)は終値で62カ月移動平均線(62カ月線)と31カ月移動平均線(31カ月線)の両線を上抜ける結果となりました。かねて本欄でもずっと注目してきましたが、思えばドル/円の月足・終値は、米国でトランプ氏が大統領に就任した2017年1月以来、長らく31カ月線に押さえ込まれ続けてきたのです。

図表1でも確認できるように、昨年の10月から今年の1月にかけて、月中にドル/円が31カ月線を上抜ける場面というのもあったにはありました。しかし、結局は上抜け切れずにあえなく押し戻されるような格好となり、今年2月には62カ月線をも一旦下抜ける一段と弱気の展開になりました。

おさらいにはなりますが、過去においてドル/円の31カ月線と62カ月線は実に様々な場面において非常に重要な節目としての役割を果たしてきました。例えば、2012年11月に終値で31カ月線を上抜けてからのドル/円は、その後グングンと上値を伸ばす展開となりました。また一転、2015年6月高値を頂点とする調整の場面では、2016年4月に31カ月線を下抜けてから、下げが一気に加速することとなりました。なお、2016年6月のブレグジット・ショック時以降、暫くの間62カ月線がドル/円の下値をガッチリと支えていたこともあらためて確認しておきたいところです。

いずれにしても、ここで重要な31カ月線や62カ月線をドル/円の月足が上抜けてきたことは、場合により新たな強気相場が始まる兆候である可能性もあり、やはり見逃せません。ちなみに今、足下でドル/円の月足の「遅行線」が26カ月前の月足ロウソクが位置するところを上抜けようとしている点にも要注目です。過去には、この月足の「遅行線」が大いにモノを言った場面というのも少なからずありました。 20180702_tajima_graph01.png もちろん、たとえドル/円の月足が31カ月線をクリアに上抜けたところで、その上方には2015年6月から形成されていると考えられる三角保ち合い(=トライアングル)の上辺も控えていますし、何よりドル/円の月足ロウソクは、なおも月足「雲」の中に潜り込んだままの状態にあります。よって、今しばらくは月足「雲」上限の水準が上値抵抗として意識される状態が続く可能性もあります。

そもそも、米国で中間選挙が行われる年というのは米・日の株価が上値を押さえられやすくなるというアノマリーもあり、そうであるならば基本的には円の下値も限られる(≒ドル/円の上値も限られる)ということになるのかもしれません。そうであれば、今しばらくドル/円は月足「雲」の中に潜ったままの状態での推移を続けるということになる可能性も確かにあります。

それだけに、逆に7月以降のドル/円が前記の「トライアングル」上辺をクリアに上抜けたり、ついに月足「雲」上限の水準を突き抜けたりした場合は、そこから一気に強気のムードが大きく拡がる可能性もあると言え、やはり月足チャート上で確認できる幾つかの重要な節目からは今後も目が離せないということになると思われます。ひとまず、当面は市場が警戒する米中通商摩擦の問題の行方をしっかりと見定めながら、来るチャンスを逃さないように心得ておきたいところです。

コラム執筆:田嶋 智太郎 経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役