日経平均の週足チャートを見ると先週末時点で13週移動平均が26週移動平均を下から上に突き抜けるゴールデンクロス(GC)を達成した。短期の移動平均、例えば25日と75日などはダマシが多く、逆にそこが目先の天井となったりもするので使えないが、週足の13週と26週移動平均のGCはダマシが少ない。そもそも、そう頻繁に示現するものでなく有効性が高いシグナルだ。

13週26週移動平均のGCはアベノミクス相場が始まって以来、2回目のことだ。前回は14年7月。当時1万5000円だった日経平均は2万円越えまでいった。アベノミクス相場が始まる1か月前の12年10月にもこのGCが示現している。そこから大相場が始まったのはご記憶の通り。日銀のレジームチェンジで気迷い気味に映る日本株相場だが、実は静かに新たなステージに入りつつあるのかもしれない。

GCの示現は、12年10月、14年7月、そして今回16年9月と2年周期。そして12年と14年の12月には解散総選挙があった。今年も12月にロシアのプーチン大統領と安倍首相の会談が予定されている。もしも北方領土問題になんらかの進展がみられた場合、余勢をかって解散総選挙になだれ込む可能性は十分ある。さすがに師走の総選挙は日程的に無理でも、年明け早々はありえるだろう。自民党が通常は1月開催の党大会を3月5日に開くと決めたことで、永田町では「1月解散説」が信憑性を増している。

その頃には米国の大統領選も12月のFOMCも終わり不透明材料は減少している。北方領土問題の進展は日本を明るくするだろう。政権基盤の安定化は株式市場に好材料で外国人買いを呼び込むきっかけになる。このシナリオが示現した場合、アベノミクス相場の上昇局面第3幕のスタートとなる可能性はじゅうぶんあるだろう。

この13週26週移動平均のGCが出るときは、どうしてそのタイミングで買いシグナルが灯るのかわからないケースが多い。その時点では相場環境の改善が実感できないのである。例えば、12年10月などは相場には閑古鳥が鳴き、日経平均は8000円台に沈む低迷ぶりだった。誰もその1カ月後から大相場が始まるなんて予想できなかった。

2014年もひどい幕開けだった。アベノミクス相場実質1年目となった2013年が記録的な上昇を演じ年末高で幕を閉じた反動もあって、2014年は1月から4月まで4カ月連続安。日経平均の月別騰落率では新年始まりの1月が最もパフォーマンスが良く、2番目は年度始まりの4月である。ところがこの年は1月が1300円超の下落、4月が500円超の下落となってワースト1位と2位である。1月から4月まで4カ月連続安のあと「セル・イン・メイ」のはずの5月に反発した。おかしな表現になるが「通常のアノマリー」の逆である。日経平均は若干の押し目を入れながらそのほぼ1年後の高値2万円越えまで息の長いラリーとなった。

今、振り返れば2014年6月の「日本再興戦略改訂2014」がコーポレートガバナンス改革の先鞭をつけたわけだが、当時はそれほど騒がれてはいなかった。実はその直後に日経平均には13週26週移動平均のGCという買いシグナルが点灯していたというわけだ。

今年も年初から大幅安で始まった。1月2月と連続して1,500円前後の下落となった。今年も「セル・イン・メイ」はなく5月は500円超の上昇となったが6月はBREXITで大幅安。通常の年は年前半のパフォーマンスが良く、後半が悪い。だが今年は既に年前半で大きな下げを何度も経験している。2014年に見られた「通常のアノマリー」の逆パターンとなるのではないか。

だが、それこそが過去2回のGC発生と同じような環境にあるということだ。足元の環境は、米国大統領選挙の行方、ドイツ銀行の経営不安、米国は果たして利上げできるのか、そして日銀の金融政策は有効に機能するのかといった不透明材料が多くリスク回避の円高が進んでいる。ドル円相場は100円割れ目前だ。こんな状況でのゴールデンクロス、買いシグナルだと言われても俄かには信じられないのも無理はない。

しかし、過去2回、2012年と2014年にゴールデンクロスが示現したあとは、いずれも大相場につながった。その時も相場環境は決して明るくなかったが、後で振り返ればそこが相場上昇の起点だった。「2度あることは3度ある」、あるいはその逆で「3度目の正直」になって今回は不発に終わるのか。ひとつだけ確かなことは、本当の強気相場は悲観のなかに生まれるということだ。悪材料ばかり目立ち、市場に悲観論が蔓延しているときこそ、あとから振り返れば、そこが大相場の起点だった、ということは往々にしてあるものである。

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