先週6日、ドル/円は一時114.73円まで上値を伸ばす場面があったものの、以降は徐々に勢いを失い、ついに昨日(14日)は終値で21日移動平均線を下抜け、足下では113円処という一つの節目水準での攻防を繰り広げています。一方で、ユーロ/ドルは昨日、ここ暫く上値を押さえる役割を果たしていた1.1660-70ドル処を上抜け、結果的に同水準付近にあったストップロス・オーダー(ストップ)を次々に巻き込みながら、あれよあれよと1.1800ドル前後まで値を戻すこととなりました。
ユーロ/ドルの1.1660-70ドル処というのは、10月下旬に完成したと見られる転換保ち合いフォーメーション=「三尊天井」のネックライン水準であると考えられることから、セオリーでは同水準が当面の上値抵抗として意識されやすいと見られていました。だからこそ、その付近にストップが多く置かれ、結果的にそれらが一気に巻き込まれたことで目先の戻りがやけに急になったものと思われます。
つまり、昨日のユーロ/ドルの戻りは「ユーロ高」というよりも「ドル安」の側面が大きく作用している(それにポンド安も加勢した)と考えられ、ここは足下で生じているややドル安の流れの原因というものをきちんと整理しておくことが重要であろうと思われます。
目下のドル安の原因、それは一つに米・日の株価推移との関連性というものが実は小さくないものと見られます。周知のとおり、米国の代表的な株価指数の一つNYダウ工業株30種平均(NYダウ平均)は、11月に入ってからも暫く過去最高値を更新し続け、先週7日には一時23,602ドルまで上値を伸ばしたものの、以降はやや調整含みとなっています。
NYダウ平均が7日に直近高値をつけに行ったのは、同日の東京時間に日経平均株価が平成バブル崩壊後の戻り高値を上抜けて大幅高を演じたことが一因と見られますが、その時点では米主要企業の決算発表もすでに峠を越えており、いずれにしても「そろそろ一旦は上げ一服」ということになるものと見られていました。
結果、NYダウ平均は徐々に調整含みとなり、9日にはボリンジャーバンド(θ=25)の+1σの水準を久しぶりに下抜けることとなりました。過去のパターンを振り返ってみると「ひとたび+1σを下抜けた場合、25日移動平均線付近では下げ止まらず、一旦は-1σの水準まで調整することが多い」ということがわかります。よって、今しばらくNYダウ平均は調整含みの展開を続ける可能性が高いと見られます。
一方、日経平均株価は先週9日に一時2万3,000円台に乗せる場面があり、平成バブル時の最高値からバブル崩壊後の最安値までの下げに対する半値戻しを達成することとなりました。以降は、文字通りの「達成感」が拡がり、執筆時点では直近(9日)高値から1,000円以上下押す格好となっています。当座の下値の目安としては、一つに9月8日安値から直近高値までの上昇に対する38.2%押し=2万1,800円処が考えられ、なおも多少の下値リスクには警戒が必要になってくるものと見られます。
総じて、米・日株価の直近高値からの調整はもう少し続く可能性があり、その間は基本的にドルの上値も限られやすいと見られます。そもそも、ドル/円自体が6日に114円台半ばの水準を試し、一旦上抜けたところで目先の達成感が拡がったわけです。よって、当面の上値の目安は一つに114.73円であり、同水準を上抜けてはじめて次の強気の展開が本格的にスタートすることになると見られます。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役