中国でも、ここ数年で、飛行機はすでに一般大衆の交通手段となっています。旅行者などの非ビジネス乗客が乗客総数に占める比率が高まりつつあり、2003年には43%でしたが、2008年には13ポイント増の56%にまで上昇しています。今後、中国の所得水準の向上に伴い、この傾向は進んでいくのではないでしょうか。それだけに中国消費セクターの一つとして注目していけると思います。中国航空業界には、中国三大航空会社である中国国際航空(0753)、東方航空(0670)、南方航空(1055)や三大航空会社のほかにも、北京空港を一手に運営する北京首都国際機場(0694)、航空券のオンライン予約・発券(ETD)システムを手がけるトラベルスカイ(0696)などがあります。

 2009年12月、国際航空輸送協会(IATA)は、2009年の世界航空業について110億米ドルの赤字が出ると予測し、同時に2010年の損失の予測額を38億米ドルから56億米ドルにまで下方修正していました。それに対して、2010年1月13日の中国民用航空局の王昌順副局長によると、中国航空産業の損益は2008年の260億元の赤字から2009年には122億元となり、黒字転換を実現しました。そのうち、中国の航空会社の損益合計は2008年の318億元の赤字から2009年には74億元の黒字転換となりました。2009年、中国航空産業の総輸送量は前年比13.4%増の427.1億トン・キロです。乗客数は19.7%増の2.3億人、貨物取扱量は9.3%増の445.5万トンとなっています。そして、王副局長によると、2010年には総輸送量を15.4%増の493億トン・キロ、乗客数を13%増の2.6億人、貨物輸送量を11.2%増の498万トンとする計画です。

 2010年の中国航空産業の見通しですが、航空輸送能力は10%拡大する予測の一方で、旅客輸送量は13%~16%増加するのではないかと予想されます。供給以上に需要が増加することによって、航空会社の運営効率の向上と航空料金の値上げも考えられます。さらに、2009年11月から実行された燃料油付加価値税徴収の再開および、人民元切り上げによる為替収益の拡大によって、2010年の航空会社の利益拡大が期待できます。

加えて言えば、個別企業のニュースも続いています。南方航空(1055)の2010年2月23日の発表によると、親会社の南方航空集団は政府より15億元の国有資本経営予算を取得し、それを南方航空に注入する計画です。2009年9月末時点で、南方航空の負債比率は85.7%でした。15億元が注入されれば、負債比率が1.6ポイント減の84.1%にまで低下できます。2010年1月に、中国国際航空(0753)は15億元の公的資金注入を取得すると発表したばかりです。今回の南方航空の資本注入は2010年に国内3大航空会社が取得した2件目の公的資金注入であり、南方航空にとっては2008年以来の2回目でもあります。2008年11月、南方航空は政府の公的資金注入で30億元を取得しました。東方航空(0670)も2008年には2回で合計90億元を取得しています。前回と比べ、今回の15億元は大きな金額ではありませんが、中央銀行が人民元預金の準備金率を引き上げる、金融引き締めへと動いている中で、航空会社への再びの資金注入は政府が航空業を支援する決心の表われと見ることができるでしょう。