2017年も後半に突入して早や久しいわけですが、足下のドル/円相場を見ていると、どうやら今年は年初から想定されていたとおり「1年を通じて比較的限られた値動きに留まる」ということになりそうな気配が濃厚。具体的には、大よそ113円あたりを中心として上下に各5円程度の値幅、つまりは108円―118円という限られたレンジのなかでの価格推移に留まるのではないかと思われます。

振り返ってみれば、昨年(2016年)のドル/円は120円前後の水準からスタートし、一時はブレグジット・ショックで99円まで下押すなど、非常に大きな値幅のなかで上下しました(下図参照)。実のところ、昨年は年初から少なからぬ市場関係者が「今年は1年を通じて少々大きく動く可能性がある」との見通しを語っていたのです。

理由は様々ありましたが、最も単純なのは「前年(2015年)の値動きが極めて限られたものだったから」というものでした。要は、大きく動く年とあまり動かない年は交互にやってくるということです。単なる偶然と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、相場が見せる様々な"表情"のなかには、これと似たような事例が意外に少なくありません。

もちろん、なかには本当に偶然というケースもあるのでしょうが、多くの場合は偶然でも何でもなく、言わば「相場が刻む一定のリズム、パターンのようなもの」が投資家心理に訴えた結果であり、これはテクニカル分析においてもよく応用されます。それは、過去に起きた比較的印象的な出来事が、何らかの形で投資家の頭のなかのどこかに"アーカイブ"され、後に何らかの刺激によってそれが"解凍"され、実際の投資行動に影響を及ぼすということなのでしょう。

たとえば、ドル/円が大よそ8年ごとに目立った高値を付けて反落に転じるというのはもはや有名な話であって、直近で125.85円の高値をつけた2015年6月は、かつて124.13円の高値をつけて一旦反落した2007年6月のちょうど「8年後」でした。また、今年に入ってドル/円は3月10日、5月10日、7月11日と、奇数月の10日あたりに決まって目立った高値をつけ、後に一旦反落しています。このパターンに基づいて「次は9月10日あたりに一旦高値をつけに行く可能性がある」などと想定してみるのも一興でしょう。

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ここで、あらためて現在のドル/円の水準に注目してみると、昨日(1日)は一時的にも110円を下回る場面があり、上図にも見るとおり、週足の一目均衡表においては「雲」のなかにすっぽりと潜り込んだ状態にあります。この週足「雲」の下限は、現在108.82円に位置しており、ほぼ同じ水準には62週移動平均線(62週線)も位置しています。

この62週線は、これまでには重要な局面でドル/円の下値をガッチリ下支える役割を果たしてきており、今年に入ってからも4月半ばや6月半ばに少々大きく下押した場面でドル/円をサポートしました。何より、108円台まで目線を下げてみると、そこは今年の想定レンジ(大よそ108円-118円)の下限と目される水準でもあり、前述した幾つかの節目とともに心理的な下支えになる可能性もあるものと思われます。

見れば、週足の「遅行線」が26週前の週足ロウソクが位置するところを上に抜けられずにいることで、なおも当面は上値の重い展開が続くこともイメージされますが、そろそろ一旦は下げ一服となっておかしくないところでもあると思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役