周知のとおり、4月23日に行われた仏大統領選の第1回投票において中道系独立候補のマクロン氏と国民戦線党首のルペン氏が5月7日の決選投票に進むこととなり、世論調査ではマクロン氏がルペン氏よりもかなり優勢となっていることから、市場の警戒感は大きく後退することとなりました。
結果、今週の週明けスタート時からドル/円は110円台を回復する動きとなり、さらに昨日(25日)は心配されていた米朝間の軍事的衝突が避けられたことにより、市場でリスクオフのムードが一段と後退し、円が売り戻される動きに伴ってドル/円が111円台をも回復する展開となりました。
少し振り返ると、先週と先々週のドル/円の週足は62週移動平均線(62週線)をクリアに下抜けるかどうかの攻防となっていたわけですが、結果的には62週線が下値を支える格好となりました。下図にも見るとおり、過去に62週線は幾つもの重要な局面で大事な役割を果たしており、たとえば2014年の5月下旬から8月半ばあたりにかけてドル/円の下値をガッチリと支えたり、2015年8月下旬から12月下旬にかけてドル/円の下値をサポートしたりした"実績"があります。
目下のドル/円は、現在111.23円に位置している31週移動平均線(31週線)や一目均衡表の週足「雲」上限(現在は111.36円)などをすんなりと上抜けるかどうかが一つの焦点となっています。仮に、今後これらの重要な節目を上抜けてくると、そこからドル/円の上値余地は拡がり易くなるものと見られます。まずは、4月10日高値の111.58円あたりが目安となり、上抜けてくれば次に3月31日高値の1,112.20円あたりが視野に入ってくる可能性があるものと見られます。
なお、今週末28日は4月末でもあり、本欄の4月12日更新分でも触れたように、月足の終値が一目均衡表の月足「雲」上限(現在は109円ちょうど)の水準よりも上方に留まるかどうかが注目されるところとなります。今さら言うまでもないことなのですが、この月足「雲」上限と月足ロウソクの位置関係というのも過去に様々なことを物語ってきています。この4月末の時点で月足「雲」上限が下値サポートとして機能したとの感触が得られる可能性は高いものと思われます。
一方、仏大統領選の第1回投票の結果を受けて、ユーロ/ドルが一気に値を上げる展開となっていることも大いに目を惹きます。決選投票でマクロン氏が勝利することとなれば、ECBの早期の出口戦略が現実味を帯び始めるとの指摘もあり、ゴールドマン・サックスはレポートで「ルペン大統領就任の確率が低いと市場が見做せば、ユーロ/ドルは1.1300ドル近くに押し上げられる可能性がある」と指摘していると伝えられています。
とはいえ、今後ユーロ/ドルが一つの節目と見られる1.1000ドルを上回り、さらに一段の上値を試すということになれば、昨年11月の米大統領選以降のドル高がすべて帳消しになるわけで、個人的には「なかなか難しいのではないか」と考えます。むしろ、昨年5月高値と11月高値を結ぶレジスタンスラインが1.1000ドルの節目を下回る方向で下降してきている点が注目され、当面、ユーロ/ドルの上値追いにポジションを傾け過ぎることには慎重でありたいと思います。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役