11月30日のNY時間の終値ベースで、ついにドル/円の月足ロウソクは31カ月移動平均線(31カ月線)を上抜けることとなりました。前回更新分でも月足チャートの重要性については触れていますが、ここであらためて以下に示したドル/円の月足チャートをご覧いただきたいと思います。

20161207_tajima_graph01.JPG

31カ月線が非常に重要な節目であることは、今年4月の月足が同線を下抜けてからの展開を見れば明らかです。4月以降は9月末あたりまで下値模索の展開が続き、その間は62カ月移動平均線(62カ月線)がずっとドル/円の下値を支える役割を果たしていました。6月下旬のブレグジット・ショック後の安値も、11月初旬の米大統領選開票時の安値も概ね62カ月線が位置するところで下げ止まることとなりました。もちろん、31カ月線と同様に62カ月線が非常に重要な節目であることは、もはや言うまでもありません。

なお、今年4月以降の月足終値で最も安い水準だったのは9月です。その終値を26カ月前の位置に記入する「遅行線」を見ると、26カ月前の月足ロウソクが位置していた水準をギリギリのところで下抜けずに切り返し、後の10月、11月は26カ月前の月足ロウソクが位置していたところをなぞるように推移したこともわかります。過去においても月足の遅行線は、実に様々な場面で相場の先行きに関する重要なヒントを与えてくれています。

たとえば、2014年の年初にドル/円が105.44円まで上昇し、その後しばらく調整含みの展開を続けたときも、当時の遅行線は一目均衡表の月足「雲」上限に上値を一旦押さえられる格好となりました(上図参照)。ちなみに、105円台半ばという水準は2007年6月高値から2011年10月安値までの下げに対する61.8%戻しの水準でもあり、その後、約7カ月間に渡って調整が続いたのも当然のことであったと言えます。

もちろん、月足「雲」の存在も極めて重要です。前回も述べたように、以前から本欄では月足「雲」上限が9月、10月以降にその水準をグンと切り上げることに注目していました。思えば、米大統領選開票時の安値は62カ月線と月足「雲」上限水準で下げ止まったことにもなります。来月(1月)以降は月足「雲」の幅が段階的に分厚くなって行くこともわかっており、そのぶん「雲」上限のサポート力は強まって行くと推察することもできるものと思われます。

ことほど左様に、ドル/円の月足ロウソクと主要な移動平均線、一目均衡表の「雲」や「遅行線」などとの位置関係は実に様々なことを物語ってくれます。そして、いま月足ロウソクはついに31カ月線を上抜ける動きとなってきました。さしあたっては、この12月の月足において終値で31カ月線が位置するところ(現在は104.14円)を上抜けるかどうかを見定めることがまずは重要でしょう。

同時に、前回も述べた昨年6月高値から今年6月安値までの下げに対する61.8%戻し=105.60円という水準を上抜けてくるかどうかという点にも注目。61.8%戻しの水準というのは、そこで一旦上げ渋る展開となることも少なくないわけですが、それだけに同水準をクリアに上抜けてきた場合には、そこから上昇に勢いに一段と弾みがつきやすくなるとも考えられます。ちなみに、次の目安となり得る76.4%戻しは119円台半ばであり、年末から来年にかけて同水準を試す展開となる可能性もあるものと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役