本欄の前回更新分で、筆者はドル/円について「89日移動平均線(89日線)と一目均衡表の日足『雲』上限の両方を上抜ければ、チャート・フェイスから受ける印象は大きく変わる」と述べました。そして先週5日、ついにドル/円は89日線と日足「雲」上限の両方を終値で上抜けました。これは年初来初めてのことです。

その後、ドル/円は89日線をサポートとしながら、目下は日足「雲」上限付近でもみ合っていますが、すでにチャート・フェイスから受ける印象は大きく変わっており、今後は徐々に上値余地を拡げる局面を迎える可能性が高いのではないかと思われます。

まずは再び104円台にしっかりと乗せ、10月6日高値=104.16円や9月2日高値=104.32円を上抜けて行くかどうかが当面の焦点。上抜けた場合には、31週移動平均線が位置する水準(現在は105.36円)や昨年6月高値から今年6月安値までの下げに対する23.6%戻し=105.34円あたりが意識される展開になるものと見ます。

12月米利上げの可能性を見据え、ドルが少しずつ強みを増していると思われる一方で、このところユーロの下げが目立ち始めていることにも要注目です。本欄の9月21日更新分で、筆者はユーロ/ドルについて「(幾つかの節目を下抜けて)弱気ムードが一段と強まった場合、まずは8月5日安値が位置する1.1050ドルあたりの水準が当面の下値の目安になる」と述べました。そして実際、昨日(11日)のユーロ/ドルは一時1.1049ドルまで下押す場面があり、まさに8月5日安値に顔合わせする格好となりました。

周知のとおり、このところ市場では英国のメイ首相が欧州連合(EU)との離脱交渉を進める過程で、英国の経済的な利益よりも移民の制限を優先する方針を示したり、中央銀行の独立性に介入するような発言をしたりしたことで、いわゆるハード・ブレグジットへの警戒が強まっています。それは英国のみならず広く欧州全体の経済の先行きを懸念させるものであり、ユーロはポンド以外の主要通貨に対して弱含みの推移となっているのです。

下図にも見られるように、ユーロ/ドルは8月5日安値や8月31日安値を結ぶ直線をネックライン(図中の橙点線)とする三尊天井(ヘッド・アンド・ショルダーズ・トップ)を10月初旬に完成させたものと見られ、その後、実際に下げ足を速める展開となっています。ここで10月3日、4日あたりに三尊天井を下方ブレイクしたと考えた場合は、8月18日高値とネックラインとの値幅分だけブレイクポイントから下方に一つの下値の目安が置かれると考えるのがセオリーです。そうした見方に基づけば、いずれ少なくとも1.0950ドルを下回る水準まで下押す可能性があるということになります。

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また8月初旬以降、8月31日安値や9月21日安値を結ぶサポートライン(図中の赤破線)が機能していたと考える場合、昨日の終値で同ラインを明確に下抜けたことによって今後の下値余地が一段と拡大する可能性もあると見られることになります。

さらに、昨日の急落によって一目均衡表の日足の「遅行線」が日足「雲」下限を下抜ける状況にもなっており、当面は弱気ムードを拭いにくい状態がしばらく続くものと見ることもできるでしょう。1.1050ドルの節目水準では一旦下げ渋る可能性もありますが、行く行くは大節である1.1000ドルや7月25日安値が位置する1.0950ドル前後の水準を試す可能性もあり得るものと、一応は心積もりしておくことも必要かと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役