東京は今年「150歳」の節目を迎える。1868年の明治維新で「江戸」の町は「東京」へと名前を変え、国際的な大都市へと発展してきた。この記念すべき年にあたり、「東京」という都市の現状と展望について、改めて見つめ直してみたい。

■世界でも群を抜く東京の巨大さ

東京が大都市であることは誰もが知っているが、その規模に関して具体的なイメージを持っている人は、意外と多くないのではないだろうか。

まず人口については、近隣都市も含めた都市圏での国際比較を行うと、東京が世界最大の人口の集積を形成している。国連によると、東京圏は2016年に約3,800万人の人口を有し、2位以下を大きく引き離してトップである。2030年においても依然首位の座を維持していると予測されている(図表1)。

20180306_marubeni_graph01.png

経済規模においても東京の巨大さは目を見張るものがある。東京都のGDP(域内総生産)は約94兆円にのぼり、一つの都市として世界一であるほか、他国と比較してもトルコ、オランダ、スイス、サウジアラビアなどをしのぐほどである(図表2)。一つの都市の経済規模がこうした国々と肩を並べる水準にあるというのは、驚くべき事実といえよう。

 

20180306_marubeni_graph02.png

 

さらに東京は規模が大きいだけでなく、総合的な評価も高い。さまざまな機関が毎年発表している都市ランキングで、東京は上位の常連である。例えば、森記念財団都市戦略研究所が発表した「世界の都市総合力ランキング2017」では、経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通・アクセスの6分野などで総合的に高い評価を受け、世界3位にランクインした。

■東京オリンピックを契機にさらなる高みへ

こうした状況にある東京にさらなる勢いを与えているのが、2020年に開催される東京オリンピックである。1964年の第1回東京オリンピックが高度経済成長期を象徴するイベントとなったように、2020年の第2回東京オリンピックも、新たな時代のシンボルとなるにちがいない。

オリンピックについては様々な見方があり、実施後の反動を懸念する声があるのも事実である。実際、第1回東京オリンピックの後には構造不況と呼ばれる景気の落ち込みがやってきた。しかし少し長いスパンで見れば、それほど心配する必要はないのではなかろうか。確かに、オリンピック関連の建設需要などはピークアウトし、一旦景気の勢いが弱まるのは不可避であろう。だが、先に述べたような東京の経済力や総合的な底力は、そうした一時的状況に左右されるような脆弱なものではないはずである。

第1回東京オリンピックを振り返ると、直後の構造不況は短期間で終わり、その後にやってきたのは、57ヶ月という当時戦後最長の経済成長を実現した「いざなぎ景気」であった。第2回東京オリンピックにおいても、直後に落ち込みがあったとしても、世界経済が安定的に拡大するなか、日本経済もそれを乗り越え、堅調な回復に回帰していくシナリオも十分ありえよう。

その際に注目されるのは、外国人観光客の増加である。第1回東京オリンピックが開かれた1964年はわずか35万人だったが、2017年には2,869万人まで拡大した。外国人観光客は消費に寄与するほか、日本の魅力を海外に伝え、将来的にヒト・モノ・カネの呼び込みにつながることも期待される。東京の観光都市としての人気も上昇しており、米国の旅行雑誌「コンデナスト・トラベラー」が発表している世界の魅力的な都市ランキング(米国を除く)では、このところ東京が2年連続で1位に選ばれている。第2回東京オリンピックを契機に、外国人観光客の訪日に一段と弾みがつくであろう。

東京の街は今後もさらに姿を変え、発展していく見通しだ。再開発計画が進み、老朽インフラの更新工事も始まっている。2027年には東京と名古屋を結ぶリニア中央新幹線も開業し、東京圏の利便性はさらに高まることになろう。東京は150歳の節目を経て、さらなる高みに上ろうとしている。


コラム執筆:金子 哲哉/丸紅株式会社 丸紅経済研究所

■ 丸紅株式会社からのご留意事項
本コラムは情報提供のみを目的としており、有価証券の売買、デリバティブ取引、為替取引の勧誘を目的としたものではありません。
丸紅株式会社は、本メールの内容に依拠してお客様が取った行動の結果に対し責任を負うものではありません。
投資にあたってはお客様ご自身の判断と責任でなさるようお願いいたします。