前回更新分の本欄では、ユーロ/ドルの話題に触れて「チャネル下辺は強い下値支持になり得る」と述べました。このチャネル下辺というのは「昨年12月3日安値と今年3月10日安値を結ぶサポートライン」のことで、実際に足下のユーロ/ドルは89日移動平均線(89日線)や一目均衡表の日足「雲」下限などの節目を次々に下抜ける弱気の展開となっているものの、下値は同ラインに強く支えられるといった格好になっています。
もちろん、この6月は石油輸出国機構(OPEC)の定例総会や米国のFOMC、英国の国民投票など極めて重要なイベントが目白押しであることもあり、場合によっては下値サポートがサポートとして機能しなくなる可能性も大いにあり得ることと思われます。そうなった場合、ユーロ/ドルにとっては昨年12月から形成されていた中期上昇チャネルを下放れるということになり、そこからは下押し圧力が少々強まりやすいということも一応は念頭に置いておく必要があるでしょう。
仮に、ユーロ/ドルが強い下値サポートを下抜ける展開となった場合、それは何らかの材料によってドル買いが優勢になることを示すわけですが、そのときに果たしてドル/円はどのような動きを見せるのでしょうか。材料によってはドル買いと円買いがともに優勢となることにより、結局はドル/円が弱含みになるというケースも考えられますが、当然、ドルが円に対しても買い優勢となり、ドル/円の上値が拡がるといったケースも考えられます。
下図に見るように、目下のドル/円は一目均衡表の日足「雲」上限に上値を押さえられるような格好での推移を続けており、言うなれば「いまだ雲は晴れず、上方視界がスッキリと開けてこない」といった状態にあります。振り返れば、昨年12月下旬に日足「雲」を下抜けて以来、長らく日足「雲」の下方での推移を余儀なくされてきたわけです。今年1月29日に一時121円台後半まで上昇した場面でも、結局は日足「雲」上限に上値を押さえられるような格好となり、そこで「雲」の晴れ間を覗くことはできませんでした。
それだけに、ここでドル/円が日足「雲」上限を上抜けるような動きとなってくれば、そのインパクトは相当に大きいと言っていいでしょう。すぐ上方には89日線や4月28日高値=111.88円などの節目もありますが、それらの節目をも上抜けるような展開になってくれば、かなり上方視界がスッキリと開けてくるということになるものと思われます。
あらためて上図を見ると、昨年12月下旬に日足の「遅行線」が日々線を下抜けてからというもの、これまでずっと日々線を明確に上抜ける場面がなかったこともわかります。そして今、久方ぶりに日足の遅行線が日々線を上抜ける場面が訪れようとしています。
あれから早や1年という歳月が流れました。それは昨年6月5日にドル/円が125.85円の高値をつけて反落してからの歳月であり、上図はそれを"見える化"したものとも言えます。周知のとおり、それ以前には2011年10月末から3年余りの長きに渡るドル/円の強気相場がありました。ここで、昨年6月高値からの下落を「3年余り続いた強気相場の調整局面」と捉えるならば、その調整が1年~1年半ぐらい続いてもまったくおかしくはありません。逆に言えば、そんな調整局面が「そろそろ最終段階を迎えている」と考えることもできるように思われます。6月を通じて、まだまだ油断禁物の状態は続くものと見られますが、相場に潜む局面変化の兆しには常に敏感でありたいものです。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役