先週6日、ドル/円は同日の終値で110円の節目を下抜け、今週11日には一時107.63円まで下値を切り下げる場面がありました。とはいえ、昨日(12日)あたりからは目先的な下げ過ぎの反動もあり、一定の戻りを試す動きに転じています。17日の産油国会合への期待で原油価格が強含んでいることや麻生財務相による口先介入も手伝ってか、足下では108円台後半までの戻りを見る展開となっており、市場では先週8日高値=109.10円から110円近辺までのリバウンドもあり得ると見る向きが多いようです。

とはいえ、一度下抜けた110円の重要な節目は当面の上値抵抗として強く意識されるものと見られ、足下で生じているリバウンドの動きには自ずと限界があると見る向きも少なくはありません。4月半ば以降はG20財務相・中央銀行総裁会議(ワシントン)、産油国会合(ドーハ)、ECB理事会、日銀金融政策会合、FOMCなど重要イベントが目白押しとなるため、まだまだ神経質な展開は続くと見ておく必要があるでしょう。

ここで、久しぶりに月足チャートを用いてドル/円相場を"鳥の目"で見つめ直してみたいと思います。下図に見るように、ドル/円の今月(4月)の月足ロウソクは今のところ31ヵ月移動平均線(31ヵ月線)を下抜ける展開となっています。この31ヵ月線と月足ロウソクの位置関係が非常に重要であることは、過去に本欄で幾度も述べてきました。

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かなり古いものになりますが、本欄の2012年11月21日更新分において、筆者は「いよいよドル/円の上方視界が大きく拡がってくる!?」として、2012年11月のドル/円の月足ロウソクが31ヵ月線を実体部分で上抜ける可能性について論じています。上図でも確認できる通り、実際に2012年11月の月足ロウソクは実体部分で31カ月線を上抜け、その後は昨年6月高値の125円台後半まで大よそ40円も値を上げる展開となりました。

そんな重要な節目の一つである31ヵ月線を、4月の月足ロウソクは下抜けてしまう可能性が高いというのです。しかるに、目先はある程度のリバウンドが生じることもあり得るものの、当面は基本的に弱含みの展開が続くと見ておかざるを得ないのではないかと思われます。多くの市場関係者が指摘するように一旦は105-106円台あたりの節目を試す可能性も十分にあると言えそうです。

この月足チャート上に一目均衡表を描画してみると、さらに様々な注目ポイントが浮かび上がってきます。それは、一つに月足の「遅行線」が今後、月足ロウソクの位置するところを下抜ける可能性が極めて高いということです。2012年11月、12月の上昇で遅行線が上抜けたことを振り返ってみても、月足ロウソクと遅行線の関係が重要であることは明らかです。つまり、当面は上値の重い展開が続きやすいものと見られます。

次に、月足の「雲」上限が今年10月あたりから急激に水準を切り上げるという点に注目します。図中の青点線・楕円で示した2013年5~10月当時の状況を見るに、月足「雲」上限はときに強めの上値抵抗にもなれば、ときに強めの下値支持にもなると考えることができます。今秋以降、この月足「雲」上限がドル/円の強い下値支持になると仮定した場合、そのことと今秋あたりから市場で米追加利上げ観測が強まる可能性があるということが平仄を合わせるような格好となるかどうか、少し長い目で興味深く見守って行きたいところです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役