先週6日に発表された10月の米雇用統計のポジティブ・サプライズは、いまだ冷めやらず。結果、市場ではドルが強く買われる展開となり、ドル/円は一時123.60円まで買い上げられる(9日)場面もありました。急激な上昇の後だけに、目下は利益確定の売りも出てきている模様で、暫しはスピード調整の局面ということになりそうですが、12月米利上げの見方が市場で強まっているだけに、下値は自ずと限られるものと見られます。

少し振り返りますと、10月22日に行われたECB理事会後の会見でドラギ総裁が次回12月(3日)の理事会で追加緩和を実施する可能性を強く示唆したことを受け、ドル/円の強気ムードはグッと高まりました。同日のドル/円は、まず21日移動平均線(21日線)を明確に上抜け、続いて一目均衡表の日足「雲」上限を上抜ける動きとなりました。後には日足「雲」上限を挟んで少々もみ合う展開となりますが、そうした局面で21日線が強く下値を支える役割を果たしていたことは印象的です。

前記の日足「雲」上限というのは、8月12日高値から8月24日安値までの急激な下げに対する50%戻しの水準とピタリ一致しており、その意味でも重要な節目でした。11月に入ると同水準を明確に上抜ける展開となり、次に目指したのは61.8%戻し=121.77円あたりの水準でした。同水準に到達したのは10月の米雇用統計が発表される前日(5日)のことで、思えばそれは8月28日につけた急落後の戻り高値を奪回する動きでもありました。つまり、複数の重要な節目に到達したところで、いよいよ6日の米雇用統計発表を待つという展開になったわけです。

実のところ、筆者は本欄の9月30日更新分において「まずは一目均衡表の日足『雲』を上抜け、次に8月28日高値を試すと見られます。そうなれば日足の遅行線も再び日々線を上抜ける強気の展開となります。同水準をも上抜けた場合、次に意識されるのは今年1月安値と4月安値、7月安値を結ぶ"以前のサポートライン"であろうと思われます」と述べています。そして、実際に米雇用統計発表後のドル/円は"以前のサポートライン"の延長線が位置する水準まで上昇することとなりました。

下図でも確認できるように、ドル/円の直近(9日)高値=123.60円は前述した"以前のサポートライン"が位置する水準にピタリと到達しました。思えば、同ラインは8月28日の戻り高値が到達した水準とも一致しており、その意味では当面の上値抵抗として意識されやすいものと考えることもできます。また、8月12日高値から8月24日安値までの急激な下げに対する76.4%戻しは123.12円あたりと計算され、この水準付近ではしばしもみ合う展開となる可能性もあるものと思われます。

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あらためて上図を見ますと、数日内にも21日線が89日移動平均線(89日線)を下から上に突き抜ける「ゴールデンクロス(GC)」が示現するものと見られます。足下の89日線は上向きに転じていますので、このGCは比較的信用度の高い強気シグナルとなります。よって、基本的には今後も強気の展開が続くものと考えられ、まずは前述した「"以前のサポートライン"に沿って緩やかに上昇するのか、あるいは同水準を上抜けるのか」が一つの焦点となるでしょう。また、いずれは6月5日高値と8月12日高値を結ぶラインも意識されやすくなるものと見られます。これらの目先的な抵抗をブレイクできれば、いよいよ100%戻しの水準となる125円台が再び視野に入ってくるものと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役