いよいよ明日から始まる10月の外国為替相場は、比較的大きな動意が見られる可能性が高いものと思われます。周知のとおり、それは欧・米・日と中国において非常に注目度が高いイベントの日程が目白押しとなっているからです。代表的なものだけを見ても、10月22日にECB理事会、27-28日にFOMC、30日に日銀金融政策決定会合が予定されており、さらに10月中には中国で共産党中央委員会第5回全体会議(5中全会)が開かれる予定であると伝わっています。
ECBの定例理事会については、追加緩和(=債券購入プログラムの規模拡大)実施の決定の有無に市場は関心を寄せており、今のところ実施決定の可能性は低いと見られていますが、足下ではフォルクスワーゲン問題の影響なども懸念されており、ともすると市場の追加緩和期待が再び高まる可能性もあります。
FOMCについては、なおも10月米利上げの可能性が残されており、それまでに発表される米経済指標の結果などによっては、あらためて市場の思惑が強まる可能性もあるものと思われます。もちろん、10月の利上げが見送られれば、むしろ12月利上げの観測が一層強まることとなるわけで、いずれにしても当面のドルは比較的底堅く推移する可能性が高いのではないかと思われるところです。
日本では、足下の景気が停滞気味で株価も極めて不安定な状況にあることから、市場では常に日銀の追加緩和実施に期待する声が聞かれます。現実問題として、米利上げよりも先に日銀が動くことは難しいでしょう。とはいえ、仮に中国の五中全会で大胆な景気対策が打ち出され、市場のムードに大きな変化が生じるような展開にでもなれば、10月の米利上げと日銀追加緩和の"合わせ技"が繰り出される可能性もないではなく、この10月相場はかなり波乱含みの展開となる可能性がありそうです。
それだけに目下の外国為替相場は方向感の見出しにくい展開となっており、ことにドル/円については下図でも確認できるように、8月25日以降長らく保ち合いの状態を続けています。この三角保ち合いのようにも見えるこう着状態はすでに相当煮詰まってきているものと思われ、近いうちに上か下へと放れることとなるでしょう。よく見れば21日移動平均線(21日線)と絡み合う状況が続いており、当然、ボリンジャ―バンド(θ=21)の「収束」も強まっています。つまりは「拡散」のタイミングも近いということです。
次にドル/円が保ち合いから放れる場合、それは「上放れ」となる可能性が高いと筆者は見ています。中国の景気悪化懸念に端を発して世界的に株安の連鎖が生じ、一時的にも急激な円高・ドル安が進行した8月下旬から1カ月余りが経過し、この10月には主要各国ならびに当の中国から何らかの具体的な政策が発動される可能性が高いと見るからです。
仮にドル/円が目下の保ち合い状態から上放れるとすると、まずは一目均衡表の日足「雲」を上抜け、次に8月28日高値=121.73円を試すものと見られます。そうなれば日足の遅行線も再び日々線を上抜ける強気の展開となります。同水準をも上抜けた場合、次に意識されるのは今年1月安値と4月安値、7月安値を結ぶ以前のサポートラインであろうと思われます。その近くには現在、89日移動平均線(89日線)も位置しており、まずはこれらの水準を試す動きとなる可能性があるものと考えます。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役