前回の本欄では、2012年あたりから形成されているドル/円の「長期上昇チャネル」に注目し、その下辺水準が一つの下値メドになるとの見方を述べました。加えて、実は下図に見られるように、週足の一目均衡表における「雲」がドル/円の重要な下値サポート役として機能しているということも見逃せません。

振り返れば、ドル/円の8月24日安値=116.12円は週足「雲」の上限水準にピタリ一致します。さらに遡ると、昨年7月に101円前半で底値を探っていた場面でも週足「雲」はドル/円をサポートしました。そもそも2012年11月に週足ロウソクの実体部分が週足「雲」を上抜けたところから、以降長きにわたる円安・ドル高の流れは始まったのです。

また、8月24日の安値も昨年7月の安値もともに62週移動平均線(62週線)が位置する水準でガッチリと下値を支持されていることもわかります。以前から本欄で述べているように、週足で見る場合には62週線や31週移動平均線(31週線)が非常に重要な相場の節目となり得ます。その実、終値ベースで見れば、ドル/円は先週まで長らく31週線にサポートされた状態を続けています。

ちなみに、「62」という値は黄金比の1.618、フィボナッチ比率の61.8%に由来しており、「31」という値は単純に62の半分です。通常、日足では89日移動平均線や21日移動平均線などに注目することが多いわけですが、週足や月足で見る場合には「62」と「31」の有用性の方が高いと言っていいでしょう。

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さらにもう1点、この図で確認しておきたいのは、週足の「遅行線」が週足ロウソクの位置するところと交錯するかどうかの瀬戸際にあるという点です。週足の「遅行線」はその週の終値を26週前(過去)の位置に記したものですから、同線が週足ロウソクと交錯するということは足下の相場が26週前の水準と近い位置にあるということです。

振り返ると、今から26週前の3月初旬から5月半ばぐらいまでの間、ずっとドル/円は概ね119-120円のゾーンを中心にもみ合いの展開を続けていました。それは、ある意味でドル/円にとって"居心地のいい水準"であったと言ってもいいものと思われます。しかるに、この119-120円というゾーンはドル円の下値メドの1つとして意識されやすいと考えることもできるでしょう。

その実、先週の週足ロウソクを見ても119-120円を下回るところは長い下ヒゲとなっており、結局のところ週末には121円台後半まで値を戻すこととなりました。今週も週末時点で119-120円を下回らなければ、週足の「遅行線」が週足ロウソクの位置するところを下抜けることはありません。

このように、目下のドル/円は様々な節目でサポートされていることがわかります。逆に考えると、仮にこれらのサポートを次々と下抜けるような展開となった場合には、そこから相当にまとまった調整を交える可能性が高いということになるものと思われます。よって、今後も時折ドル/円の週足チャートを眺め、そこに一目均衡表や62週線、31週線などを描画して、現在位置との関係をチェックするように心掛けておきたいものです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役