ギリシャの国際通貨基金(IMF)に対する15億ユーロの債務返済が「6月30日の期限までに行われなかったことを確認した」とIMFは発表しました。こうなる可能性が濃厚となった今週の週明け29日、ユーロ/ドルは一時的に1.0952ドルまで大幅に下落します。ところが、同日中には大きく値を戻す展開となり、最終的に同日終値は前週末比でプラスという少々意外にも思えるほど底堅さが感じられる推移となりました。

ギリシャ政府は7月5日にも国民投票を実施する予定としています。実際に国民投票が行われ、仮に「債権団の提案受け入れ」という結果になれば支援再開でユーロが一旦買い戻される可能性もあることから、現状ではユーロを少々売り込みにくいというところもあるのでしょう。もちろん、5日よりも前の段階であらためて支援協議が行われたり、結果的に国民投票の実施が回避されたりする可能性もないではありません。ちなみに、メルケル独首相は「国民投票が終わるまでは協議も交渉もしない」と述べています。

このように、いまだギリシャ問題の行方は混とんとした状態のままであり、現状ではユーロ/ドル相場の行方を予想することもそう容易いことではありません。では、テクニカル的に足下の値動きを分析してみた場合には、一体どのようなことが言えるのでしょう。

まず、週明け29日に見られたユーロ/ドルの大幅な戻りについては、全体に売り方が置いたストップロスが急激に巻き込まれ、大きく売り込まれた分だけ大きく買い戻されたという印象が強いと言えます。とくに、1.1150ドルあたりの水準を上抜けてから同日高値=1.1278ドルに至るまでの上げは、明らかに焦った目先筋による強烈な買い戻しによって生じたものであると判断することができそうです。つまり、市場は見た目ほどユーロに対して強気というわけでもないということです。

下図に見るように、先週23日以降のユーロ/ドルは基本的に21日移動平均線(21日線)を上値抵抗として意識しており、週明け29日も一時的に21日線を上抜ける場面はあったものの、結局のところ終値では21日線よりも下方に留まっています。一方で、下値は一目均衡表の日足「雲」上限に支えられる格好となっており、今後は日足「雲」の上限並びに下限を下抜けるかどうかが大いに注目されます。昨年12月16日高値が日足「雲」下限にガッチリと上値を押さえられた事例からもわかるように、ユーロ/ドルの値動きと日足「雲」との関係性は非常に緊密であると考えられます。

20150701_tajima_graph.jpg

実際、29日の安値は日足「雲」下限付近に留まっており、同日終値は日足「雲」上限よりも上方に浮上しています。また、3月半ば以降に形成されている中期的な上昇チャネルの下辺水準を今後明確に下抜けるかどうかという点も大いに注目されます。上図にも見られるように、29日には同水準を一時的に下抜ける場面もありましたが、終値では下抜けておらず、今のところユーロ/ドルは「まだ上昇チャネル内での推移を続けている」との見方が有効です。

この先、仮に前記の上昇チャネル下辺を明確に下抜けると、中期的なトレンドが転換した=3月半ば以降の「リバウンドは終了した」との感が強まります。その後、89日移動平均線(89日線)や日足「雲」下限を次々に下抜けた場合には、そこから一段の下値リスクへの警戒が強まるものと心得ておく必要があるでしょう。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役