自動車株の安値更新は気味が悪いですね。世界的な景気減速懸念や円高、エコカー補助金制度なども9月末で打ち切られる、といった具合に厳しい環境になりつつありますが、さらに追い討ちをかけそうなのが中国のスト問題ですね。中国は次の5カ年計画に労働者賃金を現在の2倍に増やす「所得倍増計画」を盛り込む検討に入ったという報道などもあって、現在のストなどを助長しかねない。そうすると、中国へ進出している企業の生産活動やコスト面の影響は次第に出てくるでしょう。
株価の需給も悪化しています。下がれば下がるほど、信用の買い残が増加する最悪のパターンになっている。営業サイドでは、お客さんの方から、「○○自動車、安くなったから買いたい」、などとネームバリューが確かな銘柄への投資相談は増えてきたという話を聞きますが、そういった動きが出てくるうちはまだ本格的に底打ちはしないものです。
最もこれらは足元の話ですが、この下げ、将来的に何を意味しているのでしょうか。将来、電気自動車(EV)が普及してくれば、自動車を作るのは自動車メーカーだけってことはなくなるでしょうから、現自動車メーカーのアドバンテージはなくなるかもしれません。大阪の巨大電器メーカー(M)などは簡単に作れるようになるのでは、ないかと思います。電気自動車(EV)まで出てきた世の中、近い将来、業界図がこれまでと同じってわけにはいかないでしょうね。
メガバンクやソニーの株にしたってそう、主力株が弱い。一時の上昇で「ソニー復活か」とも思いましたが、ITバブル高値からの下降トレンドラインまで戻した(売られ過ぎの修正のようなもの)だけの話。単なるリバウンドに終わるのか?と思えるぐらい。主力株全般の動きはおかしいかも。
世界的に資金を引き上げる動きが徐々に広がっている傾向にあるようです。ヘッジファンド規制はリスクマネーが収縮しますので、商品市況はじめマーケット全体にとって好ましいことではない。これまで過剰に流動していたものが上手く循環して各市場を支えていたのに、一種の「金融総量規制」を意味するものです。少し言い過ぎかもしれませんが、資金が回収されれば株なんて上がるわけない、と思いませんか?

欧州ソブリンリスクを発端に財務リスクを指摘される欧州の金融機関。財務面の傷口をリカバーするために、借り手(ヘッジファンドなど)から必死になって資金を回収している可能性もありでしょう・・・ありえますよね!
昨日(9日)なんて、アジア株は大半が上昇、欧米株も上昇、日本株だけですよ、下がっていたのは・・・。政治と株価はリンクさせて考えない方なのですが、これだけ総理大臣がコロコロ変わると、外からみたら何やっているの?ってことにもなる。資金捻出のためにアジア市場のなかでも、真っ先に日本株が売却対象になっているかもしれません。

しかし、次を見据えれば、日本は「2020年までにCO2削減目標1990年比25%」という国際公約をしています。その中核的存在が「スマートグリッド(次世代送電網)」です。スマートグリッドといっても、電力網やスマートメーターなどに加えて、情報通信や情報家電、電気自動車(EV)なども重要な構成部分になるそうです。
スマートグリッド関連は既に相場のテーマとなりましたが、そのときに目立ってとり上げられなかった情報通信セクター(特にシステム開発)に注目。伊藤忠テクノソリューションズ(4739)をずっとみていますが、高岳製作所(6621)とあわせて中期参考銘柄です。

東野幸利

株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ