今年(15年)3月18日更新分の本欄で、筆者はユーロ/ドルについて「一旦は下げ渋りやすくなる可能性があり、場合によっては一定のリバウンドが生じることもあり得る」と述べました。そして実際、ユーロ/ドルは3月13日安値=1.0462ドルをボトムに一旦は下げ渋り、4月13日安値=1.0520ドルと「ダブル・ボトム」を形成するような格好で強含み、5月15日には一時1.1467ドルまでの戻りを見るに至りました。

下図にも見るように、このダブル・ボトムのネックラインは1.1000ドルあたりに位置しています。ボトムが位置するところを大まかに1.0500ドルとすると、ネックラインまでの値幅は0.0500ドルであり、同じ値幅をネックラインから上方にとった値が1.1500ドルで、これはダブル・ボトム形成後の戻りメドの一つと考えるのがセオリーです。

その意味で、直近高値の1.1467ドルは1.1500ドルに近く、場合によっては、このあたりで戻り一巡となってもおかしくないレベルと言えます。まして、2月にユーロ/ドルが一旦戻りを試した場面でも、1.1500ドルを超えたところでは上値が重く(2月3日高値=1.1534ドル)、結局は押し戻されることになったという経緯があります。さらに、昨年12月高値から今年3月安値までの下げに対する50%戻しも1.1515ドルであり、やはり1.1500ドル近辺には一つの大きな節目が存在していると考えることができるでしょう。

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思えば、欧州中央銀行(ECB)は今年1月22日の政策理事会で量的緩和(QE)の実施を決定し、実際の債券買い入れ開始は3月としました。結果、ユーロドルは2月下旬あたりまで1.1400ドル近辺でもみ合っていたものの、3月に入ると一気に1.0500ドルを割り込む水準まで値を切り下げたのです。これだけ大幅なユーロ安が進んだことで、当然のことながら、ユーロ圏の域内経済はひと頃よりもだいぶ持ち直しました。

ところが、ここにきてユーロ/ドルは1月にECBが量的緩和の実施決定を発表する以前の水準あたりまで戻ってきてしまいました。ユーロ圏経済にとって、これでは元も子もありません。そうしたことを象徴するかのように昨日(19日)、ECBのクーレ理事は「ECBはQEの資産購入ペースを5月、6月に加速させる意向だ」と述べています。これは、明らかに一段のユーロ安へ相場を誘導したいという思いの表れと考えていいでしょう。

もちろん、ECBの思惑どおりに相場が動くとは限りませんし、ユーロ/ドルにとってはドル自体が今後、本来の強みを取り戻して行くかどうかという点も問われます。周知のとおり、ドルの行方を大きく左右する米経済指標には、このところ冴えない内容のものが目立ちます。「記録的な悪天候や港湾ストなどの影響で落ち込んだ1―3月期は一時的な例外であったとしても、4月以降は大きく持ち直す」との期待が強いだけに、すでに発表されている4月、5月の指標は全体に期待外れの結果となっています。

それでも、いまだ市場のドル買い意欲は相当に旺盛であると見え、昨日発表された4月の米住宅着工件数が久しぶりに強めの結果だったことを受けて、ドルは大きく買い戻されることとなりました。今後発表される4月、5月以降の米経済指標が徐々に強めの結果となって行くならば 、ドルは一段と上値余地を拡げる可能性もあり、そうなれば3月からのユーロ/ドルの戻りは一巡となる可能性もあります。目先は、昨日の大幅な値下がりのなかでも下値を支えた21日移動平均線を明確に下抜けるかどうかに要注目です。