「収れん」というのは、ここでは移動平均線のことです。移動平均線とは、一定期間の株価を平均したもので、相場のトレンドを見る上で重要なものです。移動平均線自体の傾きや、短期線と中期線、長期線などとのクロスは投資の判断の材料としては重要です。
 また、株価と移動平均線のかい離率などをみて、オシレータ指標としても使えるのです。一般的に使われている数字としては、日足では5日、10日、25日、75日、100日、200日といったところでしょうか。
 その期間に売買した単純平均価格になるため、ある時点で5日移動平均線よりも高い位置に株価があれば、5日間に買った人の平均買いコストを上回っている状態で、みんなが儲かっている状態、強気になって売りが出にくくなるため、株価は上昇しやすくなります。逆に株価がその下に位置していると、平均買いコストのところで戻り売りが出やすくなる、需給悪になるということです。
 短期的、中期的、長期的って、どれくらいの期間なの?といったことをよく聞きますが、時間軸の考え方はまちまちです。ただ、各移動平均線は期間の取り方によって、株価に対する反応は変わってきます。株価が急速に上昇したとき、もっとも反応がいい(傾きが変化する)のは上記の期間では、当然5日になります。200日は逆に反応はほとんど無いといっていいでしょう。
 上昇トレンドの成熟段階では、株価の下に5日、10日、25日、75日・・・と順番に推移することになります。やがて、もち合い段階に入り、そのもち合いが長くなればなるほど、それぞれの移動平均線が「収れん」するようになってきます。そうなると、次はもち合い放れの段階ですね。株価の位置がそれらの上にあれば上に放れやすく、株価が下にあれば下に放れやすくなります。
 先述しましたが、移動平均を株価が下から上に突き抜けようとすると、その線の買いコストに戻るとうことで戻り売りから強い抵抗にあいます。サッカーでもバスケットでも何でもいいのですが、相手がいるディフェンスゾーンに入ると1人1人のガードを抜いていかなければゴールには辿り着けません。
 通常、急落したあとの反発局面では5日、10日、25日が強い抵抗の順番になるわけで、攻撃する側はドリブルしながらも、その時点のガードを抜いていかねばいけないわけですが、弱ければ(株価の実力)どうしても一旦後退する場面があるわけですね。
 でも、ガード以上の強さがあればそこで粘ることができるし、突破することもできる。そうしているうちに(もち合いが続いている間)、周りのガードが寄ってきて(移動平均線の収れん)、それを阻止しようとするのですが、それらを一気に抜くことができると、あるいはそれらの上の位置にあると、その先にはガードはいないということです。そこからゴールよし、一気にドリブルしながらゴールまで走っていくこともできるわけですね。
 また、移動平均線を一本の糸と考えてください。それが束ねられると強くなるし、それが下値支持線となって強力になり、下値支持線が上昇するタイミングで株価が押し上げられるパターンになりやすいのです。後から束で追いかけられたら、必死になって逃げますよね。逃げる力が株価の上昇の早さといったことろでしょうか。
 もち合い時に株価がそれら移動平均線の上にある状態というのは需給良好、先高期待が高いとみていいかと思います。テクニカル的には・・・。

 日経平均では2003年安値7607円を付けて上昇したあと、もみ合いが続きましたが、その後、移動平均線が収れんして大相場につながりました。逆に、2007年の下落反転するときもそう。
 今の相場も可能性はあるかと思います。2003年は4月28日安値7607円から上昇して、最初に10月20日に11161円の高値をつけました。その日柄は120日。 今年の3月安値から現在までの高値8月26日10639円までは116日間で、2003年当時とほぼ同じリズムです。2003年はそこからさらに2004年4月26日の高値更新まで128日。今回その日柄を当てはめると、8月26日高値から128日目は来年の3月8日ぐらいになります。
 そして、当時は2004年4月26日高値からもち合いがかなり続きましたが、最初の高値10月20日からもち合い上放れになるまで、実に444日かかっています。 それを今回の8月26日高値から444日目を当てはめると2011年6月21日頃になります。再来年の真ん中あたりまで、もみ合い相場が続くと考える人はまだいないと思いますが、でも実際、それぐらいの日柄調整がないと、2007年高値を目指すエネルギーは蓄積されないでしょうね。

東野幸利

株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ

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