上昇相場は「上げ、下げ、上げ、下げ、上げ」と高値が徐々に切り上がる5波動構成が一般的に紹介されるケースが多いと思いますが、最後の「上げ」が二番目の「上げ」の高値を超えられないケース、つまり「上げ、下げ、上げ、下げ」で上昇相場が終わってしまうケースをまれに紹介することもあります。それ以外はあまりないですね。どちらでもいいのですが、「上げ」と一言で表現しても、それぞれ市場心理が異なるわけです。
 前者のケースで有名なのは、「エリオット波動原理」ですね。上昇相場「上げ、下げ、上げ、下げ、上げ」の5波動構成に、下げ相場の「下げ、上げ、下げ」の三波動構成をあわせ、合計8つの波で1つの周期とする考え方。期間は50年程度を1周期とするスーパーサイクルをはじめ、そのスーパーサイクルを構成する「上げ、下げ」のなかにより小さな8つの波が存在します。要するに入れ子構造というやつですね。
 さて、上記の「上げ、下げ、上げ、下げ、上げ」を「第1波、第2波、第3波、第4波、第5波」と置き換えて、それぞれの市場心理をご紹介いたしますと、
 第1波はファンダメンタルズが悪い疑心暗鬼の相場です。それゆえに売り方の買い戻しが中心で実需は伴っていないので3つの「上げ」のうちで最も短いことが多いです。上がっても大したことないだろう。悪材料を並べるのは簡単で、強気の見方をしている人が孤独になる局面ですね(笑)。
 ただ、大きな底値圏形成後にはきわめて力強くなることもある。大きな底値圏形成というのは、例えば長期低迷相場、底バイが続いていて突如、陽線が一本立ちしてくるようなパターンもあるでしょう。何か材料が出たときに売り方の買い戻しや実需が合体して急騰するパターンですね。

 第2波は、ファンダメンタル最悪で深押しが多い。要するに、第1波の上げの前まで下落した要因(悪材料)が蒸し返されてやっぱり単なる戻りか・・・などなど疑心暗鬼で買っている分、警戒感が強い。第1波の「上げ」の前の下落過程で打診買いを入れながらも更なる下げで大きな損失を被った経験則が働きますので、またそうなることを恐れて早く売ってしまう。ファンダメンタルは悪くなっているので、明確な根拠を持った買い方がいないわけです。このときも、弱気筋が「ほら見ろ、やっぱり下がるよ」と・・・評論家もそうですね。強気の見方をしている人が孤独になる局面は続きます。

 第3波は通常、第1波の「上げ」に対して1.5倍から2.5倍程度になるときもあります。ファンダメンタルズも好転し出来高も増加。日経平均の月足のチャートで言いますと、2005年5月から7月まで連続陽線「赤三兵」が出現してからの相場が第3波の状況だったと思います。かなり、儲かった方も多いのではないかと思います。このときは、さすがに弱気筋が強気に転換してきます。先行きの業績好調まで株価に織り込まれるような相場展開になってきますので、バリュエーション(PER)が極端に高くなってアナリスト泣かせの相場付き・・・となってきます。とにかく強気一色です。

 第4波は、第3波の上昇過程で「高くて買えない」といっていた人が、中途半端な下げで買ってくる。「押し目買い」というやつですね、まだファンダメンタルは好調継続していますので、早い人は売りますが、あまり大きく下押さない。

 第5波は材料の蒸し返し。「やっぱり新興国需要強い、商社は商品高で業績向上が必至」など、第3波で十分上がったはずなのに、儲かった成功体験の買いが入ってくるんでしょうね。また、日経平均やTOPIXは上がるけれど、自分で持っている個別銘柄は上がらなくなってくる。さすがに第5波にもなると、出遅れセクター(相対的に上がっていないセクター)を探して物色されるようになるので、指数は堅調を維持できるわけです。一方、みんなが買っているような銘柄しか持っていないときは、ここでピンチを迎えます。ダラダラ下げている間は、押し目買いが継続、でも出来高は高水準キープしているけど上がらない。この繰り返しで徐々に下値を切り下げる。やばいと思って売ったときには、下げ相場の1つ目の「下げ」が終わったといったところでしょうか。すでに下げ相場に入っているんですね。

 ただ、下げ相場の1つ目の「下げ」は絶好の押し目買いムードになります。また、安くなったら買おうと思っていた人が、過去の成功体験から買う。余裕の買いではないですけど・・・信用取引などは建玉可能額一杯まで買ってしまう。ここでいつも信用残がピークになりやすいのです。
 2つ目の「下げ」は、ファンダメンタルズの悪化が誰しもにわかるようになって、軟調、評価損も拡大し、投げざるをえない。この局面は値段関係なしに売りが出やすくなってくる。さらに加速する。どんどん下がるもんですから、ポジションを外すことで恐怖感から逃れようとするんですね。セリングクライマックスです。そこが底になるという市場心理のメカニズムです。そして、また次ぎの「上げ、下げ、上げ、下げ、上げ」が始まります。 
さて、現在の相場にあてはめてみると、どの波にあるでしょうか。

 話は全然変わりますが、明日の金曜日で8月相場が終わります。3月安値で4月から8月まで5ヶ月間連続して月足陽線の銘柄があれば面白そうですね。一目均衡表では「五陽連」という中期的な買いシグナルとなります。

(株式会社T&Cフィナンシャルリサーチ 東野幸利)

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