新年あけましておめでとうございます。年明けの金融市場は少々波乱含みの展開となっており、何やら昨年の今時分の状況と少し似たところがあるようにも思われます。振り返れば、昨年の年明けはアルゼンチンのペソ急落を皮切りに新興国通貨が売り込まれ、緩和マネーバブル崩壊への懸念から市場のセンチメントが急激に悪化するといった出来事がありました。そして、今年はなかなか止まらない原油安の進行やギリシャの政局不安などが先行き不安と波乱の要因になっています。

目下の市場ではリスク回避の円買いムードがやや強まっており、昨日(6日)のドル/円は一時118.06円まで値を下げる場面もありました。結果、下図(左)でも確認できるように昨日の日足ロウソクは長めの陰線となり、一目均衡表(日足)の基準線を下抜けました。加えて「10月1日高値とその後の高値を結んだライン」と「10月15日安値とその後の安値を結んだライン」とで形成される『中期上昇チャネル』の下限をも下抜ける格好となり、チャート上では複数の弱気シグナルが同時に点灯しかねない状況となっています。

実のところ、前記の中期上昇チャネルについては昨年12月17日更新分においても注目しており、当時はドル/円がチャネル下限付近にまで押し下げたことから「押し目買いのチャンスをじっくりうかがいたい」と述べました。そのときも「日足の遅行線が日々線を下抜けるかどうかを見定めたい」としていたわけですが、結果的には相場が急反発したことで日足の遅行線が日々線を下抜ける状況には至らず、後に再び120円台の後半まで値を戻す展開となりました。

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しかし、今回はすでに日足の遅行線が日々線と交錯する格好になっており、このまま一旦は遅行線が日々線を下抜ける可能性が高そうです。周知のとおり、日足の遅行線は現在の価格を当日を含む26日前(過去)の位置に記入するもので、同線が日々線を下抜けるということは26日前の水準を下回るということになります。その結果、市場では「やや失望」の反応が強まりやすくなるものと考えられます。

同時に、昨日のドル/円が21日移動平均線(21日線)を下抜けたことにも注目しておく必要があるものと思われます。実は、昨年の1月15日更新分でもドル/円が21日線を下抜けたことに注目し、なぜそのことが相場の行方にとって重要な意味を持つのかについて考えました。やはり、21日線は「過去1カ月間に投資家が売買した価格の平均値」ということですから、同水準を下抜けるということは買い方にとっても売り方にとっても、それが次の行動の理由になりやすいということだけは確かでしょう。

そこからさらに一歩進んで、上図(右)では21日線をベースにしたボリンジャーバンドを日足ロウソク上に描画しています。これを見ますと、昨日の相場においては118.25円に位置していたマイナス1σ(シグマ)の水準を一時的に下抜けながらも終値では同水準上回っています。重要なことは、今後このマイナス1σの水準を終値でも下抜けると、そのままマイナス2σ(現在は117.13円)の水準まで下落しやすいということです。

今、ドル/円に押し目買いの好機が再び訪れているものと思われます。ただ、ドル/円の日足チャートはもう一段の下値を模索する可能性もあり得ることを示しており、ここは資金と時間を分散しながら慎重に取り組んで行きたいところです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役