ついに10月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の日程に突入しました。市場では、これまでの方針通り量的緩和(QE)の終了を決定すると見る向きが大勢を占めているものの、声明では低金利を「相当の期間」続ける方針を示すと同時に「なおも労働力の活用が極端に低い状態にある」といった見解をあらためて表明するものと見る向きが多いようです。もちろん、実際にフタを開けてみなければわかりませんが、何より重要なことはFOMCの結果と声明を受けて市場がどのような反応を見せるかです。
仮にハト派色が色濃い内容だった場合、米株価は一段の戻りを試すのか、それとも景気の回復度合いが鈍いとして売り圧力が強まるのか、またドルは低金利の長期化を嫌気していったん売られるのか、それとも株価が強含みで反応した場合、それを好感して一段の戻りを試すのか......実にさまざまなパターンを想定することが可能であり、ここはいたずらに予断を持つことなく、ごくごく慎重に市場の反応を見定め、相場の表情にどのような変化が生じるのかに注目することが肝要と言えるでしょう。
例えば、ドル/円の日足チャートに一目均衡表を描画してみたとき、そこにはどのような変化が生じるのでしょうか。その変化は今後の行方について実に様々なことを示唆してくれるものと考えられ、ここは是非とも注目しておきたいところです。ポイントは数ありますが、まずは「最も大事」とされる遅行線と日々線、転換線、基準線との関係性に注目してみることは欠かせないものと言えます。
周知のとおり、遅行線は単純に現在の値(終値/当日を含む)を26日前(大よそ1カ月過去に遡ったところ)の位置に記入するもので、下図で確認できるように現在のドル/円の水準は大よそ1カ月前の水準よりも下方にあることがわかります。これは一つの弱気シグナルと言えますが、FOMC通過後に注目しておきたいのは、この遅行線が現在ほぼ同水準にある転換線を下抜けるかどうか、さらに行く行くは基準線を持下抜けるような展開となるかどうかといった点です。振り返れば、この遅行線は今年7月下旬に基準線と転換線を順に上抜けて以来、これまで両線を下抜けることはありませんでした。
なお、現在のドル/円は「過去9日間の高値と安値を足して2で割った値」=転換線、そして「過去26日間の高値と安値を足して2で割った値」=基準線の双方を上回った水準にあります。これは、ドル/円を買い持ちしている比較的多くの投資家にとって、とりあえず一安心できる水準と言えそうですが、仮にFOMC通過後にドル円が再び基準線や転換線を下抜けるような展開となった場合には、ムードが一変するものと考えられます。
そのような展開となれば、結果的にドル/円は「雲」のなかに潜り込むこととなるわけですが、この「雲」は非常に分厚く、それだけ多くのしこりを抱えていると判断されることから、当面の相場には重苦しい雰囲気がしばらく漂い続けることとなるでしょう。ひとたび「雲」のなかに潜り込めば、いずれは「雲」下限の水準を試すような展開となる可能性も否定はできないものと思われます。
もちろん、FOMC通過後にドル/円が一段の上値を試し、転換線が基準線を上抜けたり、遅行線が日々線を上抜けたりするような強気の展開となる可能性もないとは言えません。とにもかくにも、FOMC前後の相場の表情の変化を見逃さないようにしたいものです。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役