9月のドル/円の終値は109.63円ということになりました。8月の終値が104.08円でしたから、1ヶ月で5円以上も円安・ドル高が進行したこととなります。ここで、あらためて9月の月足ロウソクを含めたドル/円の「月足」の推移を確認し、今後とくに注目しておきたいポイントを幾つか押さえておきたいと思います。

まず、8月と9月で最も大きな違いが現れたのは、一目均衡表(月足)における「遅行線」と「雲」との位置関係です。この遅行線は、月足で言えば「当月の終値を当月を含む26ヶ月前(過去)の位置に記入するもの」であり、8月の終値は104.08円でしたから遅行線は「雲」の上限(104.47円)よりも下方に位置していました。

過去の本欄で幾度か指摘しているように、今年1月に105.44円の高値をつけたときも遅行線は「雲」上限に上値を押さえられるような格好となりましたし、07年6月に124.13円の高値をつけたときも、やはり同様の展開となりました(下図中、点線赤丸参照)。前述したように、8月の遅行線も「雲」上限に上値を押さえられた格好です。

ところが、この9月は遅行線が「雲」上限を明らかに上抜けることとなったのです。下図を見ても明らかであるように、少なくとも過去10年以上、このような場面を目の当たりにしたことはなく、これは「長い目で今後も円安・ドル高基調が続く」との見方に対して強力な支援材料となり得るものの一つと考えられます。

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また、かねてドル/円の月足との関係において非常に重要と考えられてきた31カ月移動平均線(31カ月線)が、この9月に「雲」上限を上抜けてきたことも見逃せません。少し振り返れば、この31カ月線は今年2月から3月にかけて上向きの62ヶ月移動平均線(62カ月線)を上抜けており、以前にも本欄で指摘したように、これらの事柄がドル/円の行方に対する強気の見方をより強く支持しているものと思われます。

こうして本稿を執筆している間に、ついにドル/円は110円台に乗せる動きとなってきました。市場関係者の間からは「大台に乗せれば、08年8月高値の110.66円を目指すのではないか」などといった声も聞かれるようになっています。相場のことですから、何かの拍子にそうした展開となる可能性も十分にあるでしょう。より長い目で見れば、いずれは120円台までドル/円が上昇する可能性さえあり得るものと筆者は考えています。

ただ、短中期的な見通しとなると少々話は別なのではないかと思われるのです。今年1月高値の105.44円がそうであったように、105円や110円などといった大きな節目に相場がひとたび到達すると、そこにある種の達成感が生じるということがあります。また、前回の本欄でも触れた02年2月高値と07年6月高値を結ぶ「長期レジスタンスライン」の存在も軽視はできないものと考えます。

何より、この10月下旬には注目のFOMCが控えているのです。米国の金融政策の方向性が「緩和」から「引き締め」に大きく転換することなど10数年に1度ぐらいしかないわけで、そのような極めて重要な局面にあっては、少し慎重過ぎるぐらいの姿勢で相場と向き合うことも必要ではないかと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役