昨日は長期投資について書きましたが、今日は分散投資について書きたいと思います。分散投資も長期投資同様、魔法の杖ではありません。分散投資は、リスクを下げることが出来得る投資方法です。

金融商品に対する投資は、そのリターンは、値上がり益であっても配当や利子であっても、お金であり、それは量です。人に対する投資であれば、量では片付けられず、様々な伸び方と云うか色々なリターンがあり得ますが、金融商品のリターンはお金と云う量であり、それは物理的に云うとスカラー量です。分散投資をしても、その全体のリターンは、個々の資産から生成されるお金と云う量の総和であり、それは個々の資産のリターンの総和であり、それよりも多くも少なくもありません。分散投資をするから急にリターンが増えることはないのです。

しかし分散投資をすることによって、全体のリスクを下げることが出来得ます。リスクは、物理的に云うとスカラー量ではなくベクトル量です。即ち、リスクには向きがあるので、その合成によっては、リスクが減ることがあります。資産の値動きは、上がったり下がったり、それはまるで波や、水面の浮き沈みのようであり、リスクとボラティリティ(値動きの振れ幅、標準偏差)は同義と考えられています。二つの資産のボラティリティをV1、V2、二つの資産を合成した資産のボラティリティをVcとし、二つの資産の値動きの相関係数をCとすると(この場合Cは、-1から+1までの数字になります)、

Vc^2(Vcの二乗)=V1^2+V2^2+2CV1V2

となると云う公式が証明されています。算数が得意な人は因数分解をするとすぐに分かりますが、相関係数が1の時、即ち二つの資産の値動きが完全に同じ方向に連動する時は、合成ボラティリティは二つの資産のそれぞれのボラティリティの和になります。一方、相関係数が-1の時、即ち二つに資産の値動きが完全に逆相関の時は、合成ボラティリティは二つの資産のそれぞれのボラティリティの差になります。この場合でかつ二つのボラティリティの大きさが同値の場合は、合成ボラティリティはゼロになるのです。即ちリスクはゼロで(合成資産の値動きは一切ぶれない・動かないで)、リターンは二つの資産のそれぞれのリターンの和になります。これが分散投資のメリットの最たる例です。
繰り返しますが、分散投資のメリットはリターンを増加させることではなくて、リスクを"場合によっては"減らすことが出来ることにあります。分散投資は魔法の杖ではありません。どのようにリターンを目指すか、そしてどのようにリスクを減らすかは、投資家の考え方や方針次第なのです。うーん、今日の話はちょっと難しいかも知れませんね。昨日の話と今日の話を合わせて考えると、大切なのは長期的な見通しを先ずは持つことであり、その次にそれを前提としてリスクをどう下げるかを考えることだと思います。このような投資の本質について、これから様々な形で皆さんと一緒に考え、説明していきたいと思います。