フォークとは食器のフォークのことです。英語(fork)では、干し草などを刺す道具のことも云います。要は(基本)2つの細い尖ったものが並んでいる道具などを指します。指で作るVサインも似ているので、Vの指で投げる野球のボールの種類フォークボールも、このフォークです。同様に、道や川が二股に分かれている場所も英語でフォークと云います。
昨晩から話題のビットコインのハードフォークは、ビットコイン(のブロックチェイン)が2つに分岐することです。急に分かりにくいですね。極端な比喩を使うと、100万円預けてある銀行の預金通帳が、90万円の通帳と10万円の通帳に分かれるようなもの、もっと正確に云うと100万円と100万新円の通帳に分かれ、1円は0.9旧円、1新円は0.1旧円の価値が当初はある、とでも云えるでしょうか。ですからこのこと自体はあくまでも「分岐」であって「分裂」ではありません。報道では「ビットコインの分裂危機」などと日本語では書かれていますが、分裂とするのは誤訳に近いと思います。
然しながら、何故このようになったかと云う経緯を見ると、ビットコイン関係者の間で、性能強化に向けた改変の話し合いが付かなかったからであり、その意味では分裂と云えるでしょう。性能とは、これも様々な定義がありますが、例えば送金などの取引を1秒間に取り扱い出来る回数が、ビットコインは大手クレジットカードに比べて約700分の1しかない、などの問題があります。
さて、分岐はいいのですが、分裂は不安定です。ドル紙幣や日本円紙幣は、どこでもいつでも誰相手でも使えると云う安定感があり、それが利用量、即ち流動性を高く維持することになっています。分裂による不安定は、流動性に関してマイナスです。シンガポールのような抜け目のない政府は、国の通貨のデジタル通貨化を図っています。デジタル通貨の利便性と、しっかりとした国が運営する安定感の双方を提供し、仮想通貨マーケットに超弩級の殴り込みを掛けるつもりでしょうか。そうするとビットコインは、隠したい取引の世界など、ニッチな世界でのみ存在感を維持し、全体の流動性は伸び悩むかも知れません。
分岐か分裂かは、狭い世界での覇権争いなのか、広い世界での覇権争いなのか、の違いを生むでしょう。この話は分かりにくくて面倒くさい話なのですが、興味と注意を払っていかねばならないと思っています。