先週8日に行われた欧州中央銀行(ECB)理事会後の会見で、ドラギ総裁が追加緩和の可能性をあらためて示唆したことにより、以降のユーロ/ドルは大きく値を切り下げることとなりました。昨日(13日)は一時1.3700ドルを割り込む場面もあり、目下は4月4日につけた安値=1.3673ドルを下抜けるかどうかの正念場にあると言えそうです。

筆者は、本欄の4月23日更新分において「ユーロ/ドルの価格推移が描く波形に基調転換の兆しが見て取れる」として、12年7月に1.2042ドルの安値をつけた時点からの値動きを振り返りました。その結果、5波構成の強気相場が展開されるなかで、その「第3波」と見られる部分が中途半端な形で終了したことに再注目することとなりました。

セオリーによれば、その影響は「第5波」に現れるとされ、このような場合に確認されるパターンの一つが「ダイアゴナル・トライアングル(斜行三角形)」と呼ばれる特殊な波形です。これは時間の経過とともに値幅が狭くなって行くウェッジ(くさび形)パターンであり、これは基調転換が生じる前に現れる波形であるとされています。

下の図でもあらためて確認できるとおり、13年7月安値=1.2755ドルを「第5波」の始点とした場合、この「第5波」には前述したダイアゴナル・トライアングルが形成されているように見られます。そして、5月8日以降の大幅な下げにより、ついに13年7月安値とその後の主要な安値を結ぶライン(=ダイアゴナル・トライアングルの下辺)を下抜けてきたこともわかります。このことは、12年7月からの上昇基調がついに終わり(=5月8日高値=1.3993ドルが第5波の終点となった)、下落基調に転換したことを告げる最初のシグナルということになり得るものと見られます。

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5月8日以降の値動きのなかでは、まずユーロ/ドルが一定期間下支えされていた21日移動平均線(21日線)を明確に下抜け、一旦は89日移動平均線(89日線)にサポートされる形で下げ止まったものの、昨日はこの89日線を下抜けたばかりか、ほどなく一目均衡表の日足「雲」下限をも下抜ける弱気の展開となりました。

冒頭で述べたとおり、目下は4月4日安値=1.3673ドルを強く意識した動きになっているわけですが、同水準は2月3日安値=1.3477ドルから5月8日高値=1.3993ドルまでの上昇に対する61.8%押し(=1.3674)の水準でもあり、これらの重要な節目が強い下値サポートとして機能する可能性は十分にあります。ただ、それだけに同水準を下抜けた場合のインパクトは相当に大きいということにもなり、まさにここは一つの正念場ということになるでしょう。

仮に、ユーロ/ドルが4月4日の安値水準を下抜けた場合、3月13日高値と5月8日高値のダブル・トップ(=転換保ち合いパターンの一つ)が完成することにもなります。さらに、すでに日々線を下抜けている日足の「遅行線」が日足「雲」を下抜けることで、弱気ムードが一段と強まる可能性もあるものと思われます。その場合、まずは2月3日安値=1.3477ドルが意識されやすくなるということも、一応は想定されるシナリオの一つとして念頭に置いておきたいところです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役