今回は、久しぶりにユーロ/ドルの行方について分析を試みたいと思います。それは、ここにきてユーロ/ドルの価格推移に、ようやく基調転換の兆しが現れはじめてきたのではないかと考えるからです。
下の図でも確認できるように、ユーロ/ドルは12年7月安値=1.2042ドルを始点とする5波構成の強気相場を展開しており、13年2月高値=1.3711ドルを始点とする「第4波」の終点は13年7月安値=1.2755ドルであったと考えることにしましょう。最大のポイントはここからで、それは次に訪れる「第5波」の終点をどう考えるかということです。
本欄の13年12月18日更新分において、筆者は「13年10月高値=1.3832ドルは重要な節目の一つであり、同水準付近の上値抵抗はなかなか手強いという印象がある」と述べました。つまり、この1.3832ドルが「第5波」の終点になった可能性もあると筆者は考えていたわけです。あくまで可能性の一つと考えていたに過ぎないとは言え、後に一段の高値を追う展開となった場面では、正直「一体、何が起こっているのだろう」と不思議に思う瞬間があったことも事実です。
しかし、後に筆者は重大なポイントに対して十分な考慮が欠けていたことに気付くこととなりました。それは、12年11月安値=1.2661ドルを始点とする「第3波」がエリオット波動理論のセオリーに照らしてみると、あまりに短く(期間)、小さい(値幅)波動に終わったという事実です。以前から本欄でも幾度か触れているように、セオリーでは「第3波」が最も長く、大きいとされているのです。
このように、5波構成の強気相場のなかで最も長く、大きいとされる「第3波」があまりに中途半端な形であっさりと終わってしまった場合、その影響は「第5波」に現れるというのも一つのセオリーです。筆者は一時期、そのことに対する考慮が欠けていました。そして、このような場合に「第5波」に現れるのが「ダイアゴナル・トライアングル(斜行三角形)」と呼ばれる特殊な波形なのです。
これは、時間の経過とともに値幅が狭くなるウェッジ(くさび形)パターンであり、上向きのウェッジは常に弱気、下抜きのウェッジは常に強気を意味するものとされます。つまり、これは基調転換が生じる前に現れる波形であり、実際に上図においても13年7月安値を始点とする「第5波」においてダイアゴナル・トライアングルが形成されていることがわかります。
なお、この波形は5つの波からなり、さらに其々の波が3波で構成されることとされています。その意味からすると、ユーロ/ドルが今年の3月13日につけた高値=1.3967ドルは5つ目の波の終点で、それは同時に12年7月安値を始点とする5波構成の強気相場における「第5波」の終点でもあったということになる可能性があります。
今後、このダイアゴナル・トライアングルの下辺=13年7月安値と今年2月安値を結ぶラインをユーロ/ドルが下抜けてきたならば、それは12年7月からの上昇基調がすでに終わり、下落基調に転換したことを告げる最初のシグナルということになり得るものと思われます。当面、注意深く見定めておきたいところです。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役