周知の通り、先週行われたFOMC後のイエレン発言を受け、ドル/円は一時102.68円まで上昇したわけですが、その後は再び膠着状態となっています。3月末・四半期末・決算期末・消費増税まで秒読み...などということを考えれば、動くに動けないのは当然のことと言えるでしょう。逆に言えば、これは「4月に入ると一気に動意づいてくる」ということなのかもしれません。

なお、少し引いた目でドル/円の価格推移を眺めてみると、一定のレンジ内における膠着感の強い値動きは1月下旬あたりから始まっていたと言うこともできます。下の図(左)を見ても分かる通り、そのレンジというのは週足の一目均衡表において「転換線」と「基準線」に挟まれた価格帯であり、ことに1月下旬以降の下値が週足「基準線」によってガッチリと支えられているところが印象的です。

よって、今後の焦点の一つは、この週足「基準線」を明確に下抜ける場面が訪れるかどうかということになるものと思われます。仮にそうなった場合、チャートフェイスから受ける印象は一気に弱気へと傾くことになるでしょうし、いずれ週足の「転換線」が「基準線」を下抜けて週足の「遅行線」が週足ロウソクに接近、あるいは下抜けるような展開となった場合には、やはり下方に控える週足「雲」が強く意識されることとなるでしょう。

筆者は、この週足のドル/円チャートを眺めるたびに、よく似たチャートフェイスを他でも目にしたことを思い起こします。それは、2月初旬以降の日経平均株価の価格推移(週足)であり、下の図(右)を見れば一目瞭然であるように、日経平均株価は2月初旬以降しばらく26週移動平均線(26週線)と52週移動平均線(52週線)に挟まれたレンジ内での推移に終始してきました。つまり、このところの日経平均株価は52週線によって下値をサポートされてきたのです。

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ところが、先週の日経平均株価の週足ロウソクを見ると、ついに終値で52週線を下抜けてきたことがわかります。もちろん、今週の週末(28日)終値が現在52週線の位置している14446円を下回らなければ、まだ"明確に"下抜けたとは言えないものと考えなければなりませんが、仮に同水準を明確に下抜けてくると、そのすぐ下方には分厚い週足「雲」が待ち構えています。

現在、この週足「雲」上限は14091円に位置しており、その下方には2月初旬につけた安値=13995円というチャートポイントも控えていることから、そのあたりの水準では一つの下値支持が機能する可能性も十分にあるでしょう。ただ、仮にこれらの下値支持をひとたび下抜けてくるような展開になると、日経平均株価は分厚い雲のなかに潜り込んでしまううえ、週足「遅行線」が週足ロウソクを下抜ける格好となり、そこから一気に弱気ムードが強まる可能性もあります。

すべては、あくまでも「仮」の話なのですが、消費増税後の不透明な状況のなかで想定し得るシナリオの一つであることも否定はできません。当面は、ドル/円が株価睨みの展開を続ける可能性も十分にあり、ある程度は下値リスクへの警戒も怠りなくしておきたいものと考えます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役