前回の本欄で想定したとおり、ドル/円は先週末から今週明けにかけて一目均衡表(日足)の「雲」下限を明確に割り込み、「三役逆転(=陰転)」の弱気シグナルが点灯することとなりました。足下では、あらためて日足「雲」下限を試すようなリターンムーブが見られていますが、これは重要な節目を抜けたときによく見られる動きであり、いずれは2月4日安値の100.75円をも下抜けて100円前後に位置する次の重要な節目を試す展開になるものと見られます。

これまで本欄で繰り返し述べてきたように、今年1月2日高値=105.44は約2年に及んだ強気相場=【第1波】の終点になったと考えられ、現在は【第2波】の調整局面にあるものと見られます。つまり、あくまでも「大きな流れは円安」ながら「当面は調整的な値動きを余儀なくされる」という想定になるわけで、今回はそのあたりのことを月足のローソク足チャートを用いて再検証しておきたいと思います。

まずは、月足の一目均衡表における「遅行線」注目してみましょう。下の図でも確認できるように、今年1月2日に直近の高値をつけたとき、月足の遅行線は「雲」上限に到達しており、結局は同水準を上抜けることができずに押し戻されるような格好で調整局面入りとなりました(図中B)。振り返れば、07年6月に124円台の高値をつけた場面でも、月足の遅行線は「雲」上限の抵抗にあって天井打ちとなりました(図中A)。やはり、それだけ遅行線は重要なのであり、(A)と(B)が同じパターンになっているのは決して偶然ではありません。そして、このことは1月2日高値が【第1波】の終点になったとの見方を裏付ける重要なシグナルの一つとなったのです。

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次に、これまた非常に重要な62カ月移動平均線(62カ月線)と31カ月移動平均線(31カ月線)に注目してみます。ちなみに、62という値は黄金比の1.618、フィボナッチ比率の61.8%から由来しており、31という値は単純に62の半分です。とくに31カ月線については、本欄の2013年4月24日更新分や2012年11月21日更新分などでも繰り返し述べてきたように、これまでにも相場の大きな流れを掴むうえで極めて重要な役割を果たしていることがわかっています。

そして今、足下では12年の年末あたりから大きく水準を切り上げてきた31カ月線が徐々に上向きになってきた62カ月線を下から上へ突き抜け、まさに長期の「ゴールデンクロス」が示現しました。上向きの62カ月線を31カ月線が上抜けたわけですから、このゴールデンクロスの信頼性は高く、これは少なくとも過去10年では見られなかったことです。

つまり、長期的に見ればやはりドル/円は基本的に強気ということになるものの、当面は一定の調整を余儀なくされ、その間、月足の遅行線は「雲」上限に押さえられ、むしろ月足ローソクは「雲」上限を意識した展開になりやすいのではないか。ただ、いかに調整が一時的に加速したとしても31カ月線を明確に下抜けることは考えにくく、しばらくは同線の強い下支えを受けながら、次の大きくて長いと考えられる【第3波】の壮大な強気相場に移行するタイミングをうかがうことになるものと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役