今回は、やはり足下のドル/円の状況に触れておかなければなりません。それは、今まさにドル/円が「一つの正念場を迎えている」と考えられるからです。周知のとおり、今年の年明けからドル/円は一旦大きく下落したものの、2月4日に100.75円の安値をつけたところで下げ止まり、以降は一定のリバウンドが生じています。下の図を見てもわかるとおり、このリバウンドは89日移動平均線(=89日線)に下値を支えられる一方で、一目均衡表(日足)の基準線に上値を押さえられる格好となっており、目下は89日線と基準線の間の間隔が見る見る狭まってきている状態です。

つまり、2月4日以降に形成されている「中段保ち合い」の状況は徐々に煮詰まってきているものと考えられ、そろそろ保ち合い状態から放れる動きが見られてもおかしくはないということになります。ここで「中段保ち合い」と称するのは、年初からの下落基調が基本的には続いているとの想定を前提にしているからであり「保ち合いから放れる」というのは「下方に放れる(=下放れとなる)」ことを意味するものと考えていいでしょう。

まして今回の保ち合いの形状は、下値が徐々に切り上がっているにも拘らず、上値は103円の手前あたりでガッチリと押さえられた「上昇フラッグ型」になっており、テクニカルの"教科書"によれば、多分に脆さを孕んだ保ち合いであるということになります。下値サポート(=今回は2月4日安値と2月17日安値を結ぶライン)がグンと切り上がってきているだけに、ともするとそのサポートを下抜けやすく、ひとたび下抜けると支えが失われて急な下落につながりやすいのが上昇フラッグ型ということになるでしょう。

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もちろん、前述した下値サポートを下抜けるには、その前に89日線を下抜ける必要があります。そして現在、この89日線は日足の「雲」下限とほぼ同じ水準にあります。つまり、この89日線を下抜けるということは同時に日足の「雲」下限を下抜けるということでもあり、それは「三役逆転(=陰転)」の弱気シグナルが点灯することをも意味することとなるのです。逆に言えば、今しばらくは89日線と日足の「雲」下限が下値サポートとして機能し続ける可能性もあり、だからこそ「今まさにドル/円が一つの正念場を迎えている」ということになるのです。

仮に、ここでドル/円が日足の「雲」下限を下抜け、明確に弱気シグナルが点灯することとなれば、まずは2月4日安値=100.75円が意識され、いずれは下方に控える200日移動平均線(=200日線)も視野に入ってくるものと思われます。実のところ、この200日線は足下でわずかに下向きになってきており、そのこと自体が一つの弱気シグナルであると捉えることもできそうです。また、明日(27日)以降は日足の遅行線が「雲」に潜り込むこととなり、同時に日々線と交錯することにもなりそうです。そのことが相場にどのような影響をもたらすのか、目先的にも注視しておきたいところです。

なお、数日内には昨年6月安値と10月安値を結ぶ中期サポートラインが200日線と同じ水準までせり上がってきます。少し先のことにはなりますが、これらの重要な節目をドル/円が下抜けるような展開となった場合には、それなりにまとまった調整となることを覚悟する必要が生じることと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役