袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つけふの風やとくらむ
これは古今和歌集巻頭二首目に収められた紀貫之の歌です。「春立ちける日よめる」とあるので、暦の上では節分である今日の明日、立春に詠んだ歌です。私は和歌が案外好きですが、恐らくこの歌は最も好きな歌ではないでしょうか。夏の日に袖を濡らしてすくった(恐らく山のせせらぎか泉の)水は寒くて凍っている筈だが、立春の今日の春の風は、それを溶かしていることだろうか。
この歌を初めて意識したのは、前にも書いたことがあったと思いますが、随分昔に辛い時期があって、神社にお詣りした後におみくじを引いたらこの歌が書かれていて、どこからかキラキラと光明が差してくるように感じたのです。古来日本には多くの節分や節供がありました。立春、立夏、立秋、立冬、元日、桃の節供、端午の節供、七夕、重陽の節供。古来から、人々は様々な切り替えを比較的頻繁にしてきたのでしょう。知恵ですね。鬼は外、福は内!