今年の年初から2月初旬まで大きく値を下げたドル/円ですが、この一週間ほどは基本的に一定の戻りを試す動きが続いています。振り返れば、ドル/円は2月3日に終値で一目均衡表の日足「雲」下限を下抜ける展開となりましたが、以降は徐々に値を戻すこととなり、結局のところ「三役逆転(=陰転)」の弱気シグナルが明確に点灯する(=2日以上連続して終値で節目を下抜ける)状況は回避されました。

ドル/円が101円前後の水準で一旦下げ止まることとなったのは、一つに同水準付近に複数の重要な節目が集中していたことにあると思われます。なお、その節目とは本欄の1月29日更新分でも指摘したように、(1)89日移動平均線(=89日線)、(2)一目均衡表の日足「雲」下限、(3)昨年10月8日安値から今年1月2日高値までの上昇幅に対する50%押し=101.01円などのことを指します。

また、以前から本欄でも注目しているシカゴ通貨先物取引市場における投機筋の円売り越しが年明け以降大幅に減少したことも、ドル/円が一旦下げ止まる動きとなったことに大きく関わっているものと思われます。周知のとおり、投機筋による円売り越しは昨年12月24日時点で14万枚を超える水準にまで膨れ上がりましたが、その後は徐々に減少を続け、今年2月4日時点では7万62829枚にまで縮小しました。つまり、それだけ投機筋による円の買い戻しが進んだことにより、一頃よりは円買いの圧力も弱まっていると見ることができるわけです。

とはいえ、今足下で生じているドル/円のリバウンドの動き(=今後の上値余地)にも自ずと限界はあるものと思われます。それは、まず下の図にも見るとおり、現在ドル/円が位置する水準のすぐ上方には21日移動平均線(=21日線)や日足の「基準線」など、今後の上値の抵抗となりそうな節目が控えているからです。とくに21日線は、これまでに本欄でも幾度かその重要性を確認しています。

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また、現在のドル/円は非常に分厚い日足「雲」のなかにあります。それだけ過去の取引に厚みがある価格帯に位置しているということで、水準が切り上がるほど買い方の売りが出てきやすい状況にあると見ることができます。加えて、すでに日々線を下抜けている日足の「遅行線」が、今少しずつ日足の「雲」に近づいていると見ることもできます。この遅行線と雲との位置関係がいかに重要であるかは、過去の価格推移からも明らかです。

そもそも、ドル/円は今年1月2日に105.44円の高値をつけるまで2年ほどに及んだ強気相場が一旦終了し、現在は数カ月に及ぶ調整局面の最中にあるものと思われます。値幅にして大よそ30円ほどの値上がりに対する調整ですから、それが直近(=2月4日)安値である100.75円で完了したと考えるには少々無理があるでしょう。

今後、再び調整色を強めた場合には、あらためて89日線や日足「雲」下限などの節目を下抜ける可能性が高いものと見られます。結果としていよいよ「三役逆転(=陰転)」の弱気シグナル点灯することとなれば、まずは昨年10月8日安値から今年1月2日高値までの上昇幅に対する61.8%押し=99.96円が意識されやすくなるものと見ます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役