先週23日、ドル/円はアルゼンチンペソをはじめとする新興国通貨の急落をきっかけに大きく下落することとなりました。翌24日には1月13日安値=102.85円をも下抜け、そこから下げの勢いは加速。同日は、ついに終値で一目均衡表(日足)の「雲」上限を下抜ける水準まで下押しする展開となりました。さらに、週明け27日には一時101.76円まで下落する場面を垣間見ることとなり、こうした値動きを反映して日足の「遅行線」が日々線を明確に下抜けたという事実は見逃せません。
振り返れば、ドル/円は1月13日以降、基本的に21日移動平均線(21日線)に上値を押さえられる格好でしばらく推移し、結局は同線を明確に上抜けることができないまま、後に大きく下落することとなりました。このことから、今後も21日線は強い上値抵抗として意識され続けるものと考えられ、当面は再び105円台をうかがうような展開にはなりにくいものと見られます。
そうであるとするならば、やはり1月2日高値=105.44円は「第5波の終点」であったとの感触が一段と強まってくることになるでしょう。思えば、昨年10月8日安値=96.57円が「第5波の始点」であったとの感触がグッと強まったのは、昨年11月初旬に日足の「遅行線」が日々線を明確に上抜けたときからでした。そして今、その「遅行線」は日々線を明確に下抜けています。よって、今後はとりあえず「105.44円からドル/円は本格的な調整局面に突入した」という前提で、当面の下値余地を想定しておく必要があるものと考えます。
下の図でも確認できるように、昨年10月8日安値=96.57円から105.44円までの上昇に対する38.2%押しは102.06円と計算され、今週27日以降の日足ロウソクの推移は、この38.2%押しの水準に一旦到達して、そこでとりあえずは下げ渋ったと考えることができそうです。結果、足下では一定の戻りを試す動きとなっており、本日(29日)は朝方から103円台を回復する展開となっているわけですが、上方から21日線の下押し圧力が重くのしかかっていることもあり、やはり今後の上値余地は自ずと限られているのではないかと思われます。
今後、前述した38.2%押しの水準を再び試すような展開となり、そのまま今週27日安値=101.76円を下抜けるような値動きとなれば、次に日足「雲」の下限、あるいは50%押しの水準=101.01円あたりが意識されやすくなるものと見られます。ちなみに、執筆時においては89日移動平均線が101.19円の水準まで上昇してきており、101円台前半という水準には複数の重要な節目が集まっていることも確認されます。
そして、いずれ日足の「雲」下限をも下抜けるような展開になった場合には、その時点で「三役逆転(=陰転)」の弱気シグナルが点灯し、ドル/円の下落リスクは一段と強まることとなるでしょう。結果、次に意識されやすいのは61.8%押し=99.96円であり、さらに昨年6月安値と昨年10月安値を結ぶ中期サポートラインの存在もいずれは強く意識されるようになってくるのではないかと想定されます。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役