前回更新分の本欄では、年明け以降のユーロ/ドルの値動きと21日移動平均線(21日線)の関係について触れました。結局、その後のユーロ/ドルは終値で21日線を上抜けることができず、むしろ同線に押し戻されるように値を下げる展開となりました。先週17日には、昨年7月9日安値と11月7日安値を結ぶ中期的なサポートラインを下抜け、ほどなく一目均衡表(日足)の「雲」下限をも下抜けたことで、いわゆる「三役逆転(=陰転)」の弱気シグナルが点灯することとなりました。
ここで、仮に今後ユーロ/ドルの下値余地がある程度拡大して行くとしましょう。その一方で、以前から本欄で想定しているように、遅かれ早かれドル/円の「第5波」が終点を迎えて当面は調整局面が続くとするならば、当然のことながら、いずれはユーロ/円の行く手にも暗雲が垂れ込めてくることとなるのではないでしょうか。
実際、下の図でも確認できるとおり、ユーロ/円は昨年12月27日に145.69円の高値をつけたところが天井となり、以降は下落基調に転じています。1月6日に21日線を終値で下抜けてからは、執筆時まで一度も終値で21日線を上抜けることはなく、明らかに21日線が強い上値抵抗となっていることもわかります。
先週14日には、一目均衡表(日足)の「転換線」が「基準線」を上から下に突き抜けており、それ以前に21日線を下抜けたことに加えて、もう一つの弱気シグナルが灯りました。そして、今最も注目しておきたいのが日足の「遅行線」が日々線を明確に下抜けるかどうかという点です。ちなみに、あらためて過去6カ月間の遅行線の推移と日々線との関係を確認してみると、その間に遅行線が明確に日々線を下抜けたことはありません。
また、上図の右の方に目を向けると、比較的分厚い日足「雲」がユーロ/円の行く手で待ち構えているようにも見えます。これは、文字通り「暗雲」です。現在、その「雲」上限は139.26円あたりに位置していますが、いずれは143円近辺までグンとせり上がってくることも見て取れるでしょう。つまり、今後ユーロ/円が現在位置している水準、あるいはそれ以下の水準で推移するならば、ほどなくユーロ/円は日足「雲」のなかに潜り込むこととなるわけです。
ここで再び過去6カ月間の日足「雲」と日々線の関係を見ていると、その間に日々線が明確に日足「雲」を下抜けたことはありません。それだけに、今後ユーロ/円の日足「遅行線」が日々線を明確に下抜けたり、日々線が日足「雲」下限を明確に下抜けたりした場合には、それ相応のインパクトがあるということになるでしょう。
1月21日付の日本経済新聞朝刊に「株、欧州関連に売り」の見出しが躍りました。昨年末時点よりも円高・ユーロ安が進んでいることで「欧州での売り上げ構成比が高い、あるいは輸出比率が大きい銘柄が軒並み安となっている」という記事内容でしたが、6か月前に比べればまだ相当に円安・ユーロ高の水準にあることも事実です。よく言えば非常に「敏感」で悪く言えば非常に「臆病」な株式相場は、一段の円高・ユーロ安に傾くことを大いに警戒しているということなのかもしれません。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役