足下でドル/円は100円を超える水準までの戻りを見るに至っており、これまで本欄でも述べてきたように、もはや「5月下旬から形成されていた『三角保ち合い』を明確に上放れた」と言っていいものと思われます。

そうであるとするならば、本欄の10月30日更新分で想定したように、5月22日高値からの調整はa-b-c-d-eの5波で構成され、10月8日安値=96.57円は三角保ち合いの終点(と言うよりも「第4波(=修正波)」の終点)になったとの見方は有効であったということになりそうです。つまり、すでにドル/円は10月8日安値を起点とする「第5波(=衝撃波)」の局面に突入していると見ることができるわけです。

ここであらためて確認しておきたいのは、本欄では「12年2月1日安値=76.02円を始点とする5波構成の強気相場が展開されている」との見方をメーンシナリオに置いているということです。下図にも見るとおり、その「第1波」は12年3月15日高値までであり、そこから12年9月13日安値までが「第2波」、そこから13年5月22日までが「第3波」、そして5月22日高値から前述した10月8日安値までが「第4波」であるというシナリオです。

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では、このシナリオが適当であるということを前提とした場合、肝心の「第5波」は一体どのあたりの水準を目指すのが適当と考えたらいいのでしょう。波動理論の"教科書"にはこうあります。「強気相場を形成する連続した5つの波のうち3つの衝撃波(第1波、第3波、第5波)においてエクステンション(延長)が生じることは珍しくないが、このエクステンションはどれか1つの波においてのみ生じる」。

周知のとおり、このたびの強気相場においては「第3波」に明らかなエクステンションが生じていたことがわかっています。ということは、すでにスタートしていると見られる「第5波」にエクステンションは生じない可能性が高いということです。そして、その場合の「第5波」の値幅は「第1波」のそれとほぼ等しくなるというのがセオリー。つまり、上図にも見るとおり、このたびの「第1波」の値幅は8.15円でしたから、この値幅を「第5波」の始点と見られる96.57円に加算すると104.72円あたりが一つの目標になってくるということになるのです。

もちろん、それ以前に5月22日高値=103.73円をブレイクするかどうかということがまずは重要ですし、強気相場においては「第5波」が「第3波」の高値を超えることに失敗する「フェイラー(未達成)」が生じることも少なくはありません。また、市場関係者のなかには、07年6月高値から11年10月安値までの下落に対する61.8%戻し=105.50円あたりの水準を念頭に置いている向きも少なくないものと見られます。

いずれにしても、そろそろ5波構成の強気相場は仕上げ段階に入ってきていると見ることができそうで、一段の上値を追う展開には期待したいものの、あまり欲しがり過ぎてもいけないということになるのではないかと思われます。なお、次回以降の本欄では「第5波」が終点に達すると思われる「時期」についても考察したいと考えています。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役