以前から本欄では、ドル/円の価格推移について、昨年2月1日安値を始点とする5波構成の強気相場が続いており、現在は今年5月22日高値を始点とする「第4波(=修正波)」の局面にあるという一つのシナリオを前提に、相場の行方を予想してきました。この「第4波」は、本欄の6月19日更新分でも述べたとおり、a-b-cの3つの波を持つものと考えられ、5月22日高値から6月13日安値までを「a波」、6月13日安値から7月8日高値までを「b波」とすると、7月8日高値からの調整は「c波」、つまり現在は「第4波(=修正波)」の最終段階にあると見ることができるように思われます。
なお、強気相場のなかで現れる修正波は、大きく「ジグザグ」、「フラット」、「三角形(トライアングル)」のパターンに分かれるとされており、強気相場入りしたことに疑心暗鬼な段階で生じる「第2波」は「ジグザグ」のパターンになることが多いとされます。実際に、昨年3月高値から同年9月安値までに形成されたと見られる「第2波」は「ジグザグ」のパターンでした。しかし、非常に強い「第3波」の後に形成される「第4波」は、利益確定の売りと出遅れてきた参加者による買いが拮抗する局面であり、基本強気であるだけに明確なパターンのない俗に言う「ランダムウォーク」の状態になることが少なくないとされます。つまり、もともと「第4波」は複雑で見分けにくく、あえて言えば「フラット」や「トライアングル」のパターンになることが多いということです。
下の図にも見る通り、現在のドル/円は21日線を明確に下抜けた後、一目均衡表(日足)の「雲」上限をも下抜け、とりあえずは「雲」下限付近で下げ止まるような格好となっています。ちなみに、直近(7月29日)安値の97.64円は6月13日安値から7月8日高値までの上げに対する50%押しの水準に一致しており、一旦は下げ止まりやすい状況にあります。よって、まずは一つの重要な節目である「雲」下限、50%押しの水準で底入れし、直近安値が「c波」の終点となるのかどうかを見定めることが必要です。
仮に、前述した「雲」下限を明確に下抜けてきた場合、それは同時に「遅行線」が日々線を下抜けることを意味し、そうなると「三役逆転」の弱気シグナルが再点灯することとなります。つまり、そこからは一段の下値メドを想定する必要が生じ、まずは6月13日安値から7月8日高値までの上げに対する61.8%押し=96.74円、76.4%押し=95.62円などが意識されることになるものと思われます。
場合によっては76.4%押しの水準を下抜ける可能性もないではなく、その場合は6月13日安値=93.79円があらためて意識されることとなるでしょう。もちろん、この「第4波」が「ジグザグ」のパターンになる可能性も現状では完全に否定できず、その場合は2月25日安値=90.88円あたりまで目線が下がることとなりそうです。
いずれにしても、目下の「第4波」は最終の仕上げ段階にあるという見立てとなり、今後はその終点がどこになるのかを見定める時間帯にあたるものと思われます。以前から本欄でも述べている通り、ドル/円の45-50週(安値)サイクルの観点からすれば、この7月下旬から8月下旬あたりが主要な(「第5波」の始点となる)安値をつける時間帯にもあたることとなります。複雑で見分けにくい「第4波」だけに、より注意深く今後の展開を見守りましょう。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役