前回(6月5日)更新分に引き続いて、今回もドル/円の日足の動きに注目します。前回の本欄では「仮にドル/円が40日移動平均線(40日線)を下抜け、遅行線が日々線を下抜ければ、やはり意識されやすいのは一目均衡表(日足)の『雲』上限が位置する水準であり、その『雲』に潜り込んだ場合には次に『雲』下限が意識される」と述べました。
そして案の定、ドル/円は先週5日に40日線を明確に下抜け、6日には一目均衡表(日足)の「雲」上限を割り込みました。翌7日には一時的にも「雲」下限を下抜ける動きとなり、週明け10日には一旦切り返すものの、99円前後の水準から再び反落し、目下は「雲」下限付近で下値を支えられている模様です。この「雲」下限付近には、下図に見る通り今年2月25日安値と4月2日安値を結ぶサポートラインも位置しており、ここは一つ重要な下値支持水準と見ておく必要があるでしょう。
このように少々不安定な状態が続いているなか、昨年秋以来長い間なかったドル/円の動きが幾つか見られるようになっているということには注意を要します。それは、一つに一目均衡表(日足)の「遅行線」が明確に日々線を下抜けてきたということです。これは昨年10月半ばに遅行線が日々線を上抜けて以来初めてのことであり、見過ごせない現象の一つと考える必要があります。いずれ調整一巡後に相場が切り返したとしても、この遅行線が再び日々線を上抜けるまでには相当の日柄が必要になるものと見られます。
また、先週5日あたりから21日移動平均線(21日線)の方向が明らかに「下向き」になってきたことにも注目です。もちろん、これほどハッキリと下向きに方向を変えてきたのは、昨年10月半ばあたりに21日線の方向が上向きに転じて以来のことです。その一方では40日線も緩やかに下向きとなってきており、今後、下向きの21日線が下向きの40日線を上から下へ突き抜けた(デッドクロスが示現した)場合には、その時点で弱気のシグナルが他に加えてもう一つ増えることとなります。
前述したように、すでにドル/円が一目均衡表の「雲」下限や重要なサポートラインの一つが位置する水準にまで到達したことを考えると、目先は一旦リバウンド局面に入る可能性もあります。しかし、今後ひとたび「雲」下限を明確に下抜けた場合には、それこそ長い間見られなかった「三役逆転」の弱気シグナルが点灯することとなり、ドル/円の下値余地はある程度拡大することとなりそうです。その場合、まずは先週7日安値の94.98円が意識されやすく、同水準をも下抜けた場合には昨年9月安値から今年5月高値までの上げに対する38.2%押し=93.58円、あるいは今年4月2日安値の92.57円を試す展開となる可能性があります。
前々回(5月29日)の本欄更新分で触れた日経平均ボラティリティー・インデックスは昨日(11日)終値時点で39.31と、依然として40前後の異常な水準で推移しています。この数値が20台にまで低下、安定してこないことには、なおも日経平均株価が激しく上下する展開は続き、その動きに連れてドル/円が一時的にも大きく下押す可能性もあるものと見ておく必要があると言えるでしょう。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役