5月が終わり、注目していたドル/円の月足(ロウソク)は8カ月連続の「陽線」となりました(下左図参照)。変動相場史上における新記録の達成です。少し気になるのは、5月の月足がやや長めの上ヒゲを伸ばす格好になったこと。加えて、5月の終値が一目均衡表(月足)の「雲」上限が位置する水準に留まったことです。この「雲」上限が今後も強く意識され続けるようであれば、6月のドル/円は上値の重さが嫌気され、調整色の入り混じった展開となる可能性があります。

仮に、6月の月足が「陰線」ということになれば、その調整ムードが翌月、あるいは翌々月あたりまで持ち越されるということも十分にあり得ます。「8ヶ月連続の陽線」という結果がもたらす次の展開は「やはり6月も陽線」となる可能性よりも、むしろ「さすがに6月は陰線」となる可能性の方が高いと考える必要があると思われます。決して、先行きに対して悲観的で弱腰になるというのではなく、背負うリスクに見合った慎重さが投資家には求められるということです。

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このあたりでドル/円が「一旦調整局面入り」となる可能性については、上右図にある日足の動きからも、その兆候がうかがえるのではないかと思われます。まず、ドル/円の日足は先週5月30日に21日移動平均線(21日線)を終値で下抜けました。この21日線は過去に幾度かドル/円の下値を支える役割を果たしてきています。

もちろん、より強い下支えとなってきたのは40日移動平均線(40日線)であり、上右図に見るとおり、今年の4月4日に日銀が「異次元緩和策」の実施を発表して以来長らくの間、ドル/円が同線を下抜けることはありませんでした。しかし、今週6月3日には一旦この40日線を終値で下抜け、その後もこの40日線を挟んで小刻みに上下する展開となっています。つまり、いまだ「40日線を明確に下抜けた」とは言えない状況にありますが、今後40日線を明確に下抜けた場合には、やはり「一旦調整局面入り」との感触が強まることとなりそうです。

そして何より今後注視しておきたいのは、一目均衡表(日足)の「遅行線」と日々線の関係です。上右図に見るとおり、この遅行線の行く手には今、日々線の"小高い山"が立ちはだかっています。これまで、幾度か似たような局面を迎えたこともありましたが、そのたびにドル/円相場が急騰し、すんでのところで遅行線が日々線を下抜けるといった事態は回避されてきました。しかし、さすがに今回は遅行線が一旦、日々線を下抜けることも避けられそうにないものと思われます。

今後、仮にドル/円が40日線を下抜け、遅行線が日々線を下抜ければ、やはり意識されやすいのは一目均衡表(日足)の「雲」上限が位置する水準です。その「雲」に潜り込んだ場合には、次に「雲」下限が意識されるでしょうし、場合によっては「雲」下限をも下抜けて、昨年9月安値から直近(5月22日)高値までの上げに対する38.2%押し=93.58円あたりまでの調整となる可能性も封印はできないものと思われます。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役