本欄の2013年2月27日更新分では「すでにユーロ/ドルのリバウンドは終了したのか?」と題して、ユーロ/ドルの相場分析を試みました。当時(1ヶ月前)は、下の図にも見るように、昨年7月安値とその後の安値を結ぶサポートラインを下抜け、さらに一目均衡表(日足)の「雲」上限をも下抜けた状態で「目先は『雲』下限を下抜けるかどうかが焦点」と述べています。果たして、その後の展開は...。

2月下旬の数日間、一目均衡表(日足)の「雲」下限が意識され、同水準付近で推移していたユーロ/ドルは、3月に入ってその「雲」下限を下抜け、弱気ムードが一段と強まることになりました。見えにくくなるので一目均衡表(日足)の基準線と転換線は下の図に描画していませんが、ずっと以前の段階で転換線は基準線を下抜け、後に遅行線が日々線を下抜けていましたから、この「雲」下抜けで「三役逆転」という相当に弱気のパターンが示現してしまったことになります。

その後は、重要な心理的節目である1.3000ドルを試すような展開が続き、同時に遅行線が「雲」下限付近でのもみ合いを続けましたが、この遅行線が「雲」下限を下抜けたことで、ついに1.3000ドルをも明確に下抜けることとなり、次は下方に位置する200日移動平均線(200日線)を試すような展開へ。そして、とうとう一昨日の3月25日には終値ベースで200日線を割り込み、昨日(26日)も200日線の下方での推移となりました。

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実のところ、この200日線が位置しているのは昨年7月安値から今年2月高値までの上げに対する半値(50%)押しの水準でもあり、同水準を下抜けたからには次に61.8%押しの水準=1.2679ドルが意識されやすくなるものと見られます。さらに、同水準より少し下方には昨年11月安値=1.2661ドルがあり、仮に同水準をも下抜けるとなると、そこからはある程度、まとまった下げになる可能性が高まると思われます。

2月下旬は"イタリア・ショック"、そして今回は"キプロス・ショック"とでも言いましょうか、どちらも依然として先行きは不透明なままです。キプロスに関しては、同国がEU加盟国であると同時にロシアの「出島」的な存在でもあり、そのこと以外にも極めて複雑な歴史的・構造的問題を抱えている国であるということを踏まえたうえで、そのような国もユーロ参加国の一員であるということは、いかにユーロの統一や安定が難しいことであり、程遠いものであるかということをあらためて思い知らされる気がします。

イタリアの政局混乱は、同国の経済的地盤を一段と沈下させることにつながりますし、GDPの6割近くにも相当する巨額の金融支援を受けるキプロスにしても、その経済の立て直しには気が遠くなるほどの時間がかかることでしょう。もちろん、ギリシャにしてもスペインにしても、いまだ状況は改善の方向に向かっておらず、総じてユーロの価値は今後も低減して行かざるを得ないものと見られます。その一方で、米国経済が徐々に回復の足取りを強めて行くとするならば、やはり少し長い目で見て1ユーロ=1ドル(パリティ)に向かうと考えるのが自然であると思われてなりません。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役