イタリアで24~25日に行われた総選挙の結果、上院で過半数を占める政党連合がなくなり、政局の混乱が長引くとの懸念からイタリアの国債利回りが足下で急上昇。沈静化しつつあった欧州債務危機への警戒が再び強まるとの見方が広がり、目下はユーロが些か軟調に推移しています。
もっとも、ユーロに対する売り圧力が強まり始めたのは今年(13年)2月初旬からのことで、その要因としては、ひとつにユーロ圏の域内景気が雇用情勢の悪化などによって想定以上に落ち込んでいることが挙げられます。実際、ユーロ圏の鉱工業生産は11年の秋以降ほぼ一貫して落ち込み続けており、足下の失業率は99年のユーロ導入以来の最悪水準となっています。にも拘らず、ユーロ相場が昨年(12年)7月下旬をボトムに対ドル・対円でともに上昇を続けたことから、市場では徐々に「現在のユーロ圏の景気回復力を考えると、一段のユーロ高進行には到底耐えられないのではないか」との見方も広がっていました。
下の図を見ても分かるように、ユーロ/ドルは12年7月の1.2042ドルをボトムにして、13年2月初旬に1.3711ドルの直近高値をつけるまで、比較的大きなリバウンドを続けていました。この1.3711ドルというのは、11年5月高値から12年7月安値までの大幅な下げに対する50.0%戻しと61.8%戻しの中間より少し上の水準に位置します。つまり、当面のリバウンドが目指す水準としては、概ね十分なところまで到達したと考えることができます。
結果的に、61.8%戻しの水準にまでは到達せずに反落したことから、市場では徐々に13年2月初旬につけた1.3711ドルを以て、ユーロ/ドルのリバウンドは終了したとの感触も強まり始めます。そして、今回のイタリア総選挙です。その結果を受けてユーロ/ドルは、ついに12年7月安値と同年11月安値を結ぶサポートラインを明確に下抜けました。また、それ以前に一目均衡表(日足)の「遅行線」が日々線を割り込み、同時に日々線が「雲」上限を下抜けるといった動きも見られています。これらは、いずれも強い売りシグナルと捉えることができるでしょう。
執筆時のユーロ/ドルは一目均衡表(日足)の「雲」下限付近に位置しており、目先はこの「雲」下限を下抜けるかどうかが焦点となります。仮に、この「雲」下限を下抜けるとすぐ下方には重要な心理的節目である1.3000ドルが控えており、同水準ならびに13年1月安値の1.2998ドルをも明確に下抜けた場合には、ある程度まとまった下げとなる可能性が警戒されるようになります。ちなみに、12年7月安値から13年2月高値までの上げに対する50.0%押しは1.2876ドルあたり、61.8%押しは1.2679ドルあたりであり、今後はそうした水準が意識される可能性があるということも、頭の片隅に置いておくことが必要かと思われます。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役