明けましておめでとうございます。昨年(12年)は、ドル/円が上昇基調に転じたとの感触を少しずつ強める印象的な兆候が幾つも確認される年となりました。 ここで少し振り返っておくことにしましょう。
まずは、本欄の12年3月14日更新分(http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/2012/03/14.html)でも触れたとおり、12年2月に07年6月高値から長らくドル/円の上値を押さえていた「長期レジスタンスライン」を明確に上抜けたことが始まりでした。
後に、筆者は12年5月23日更新分(http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/2012/05/23.html)で描いた一つのシナリオが正しいかどうかを確認する時間を過ごすこととなります。それは、エリオット波動理論に基づく5波構成の強気相場は12年2月安値を始点としており、同年3月高値までが第1波でそこから第2波が始まっているというものでした。セオリーによれば第2波は「ときに急落パターンを伴って、あたかも弱気トレンドが再開されたように見える」とされ、実際にその通りの展開となりましたが、何より重要なのは「第2波が第1波の底を下回ることは決してない」ということでした。
結果的に、第2波の終点は12年9月安値ということになり、確かに同安値は第1波の底を下回りませんでした。加えて、これまで本欄で幾度か触れているようにドル/円の過去の価格推移には「45-50週ごとに安値をつけるサイクル」が確認でき、12年9月安値をつけた週というのは、11年10月に75円台の歴史的安値をつけた週から「46週目」にあたったということも見逃せないものとなりました。
なお、12年10月3日更新分(http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/2012/10/03.html)では「米大統領選の年のアノマリー」という少々ユニークな話題を取り上げ、その時点で「アノマリーが有効ならば、年内に12年3月高値の84.17円を上回るということになるのですが...」と記しています。結果的に、このアノマリーが今回も有効であったことは、興味深い一つの事実です。
そして、12年11月21日更新分(http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/2012/11/21.html)では「ドル/円の月足ロウソクと31カ月移動平均線(31ヶ月線)の関係」について触れています。結果的に、12年11月の月足ロウソクは実体部分で31ヶ月線を上抜けることとなり、この時点でドル/円がすでに上昇基調に転じているとの感触は相当に強いものとなったことを印象深く思い出します。
その後ダメ押しとなったのは、12年12月26日更新分(http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/2012/12/26.html)で述べたように、10年8月あたりから形成されていた「ヘッド・アンド・ショルダーズ・ボトム(逆三尊)」のネックラインを、ついに12年12月12日の時点で明確に上抜けたことです。
このように12年を通じて、私たちはドル/円の上昇基調への転換を段階的に確認してきたわけであり、この年明け=13年1月4日には88.40円の高値を付けるに至りました。それにしても、12年9月安値からのドル/円の上昇は非常に急ピッチなものであり、さすがに足下では目先の過熱感が否定できない状況となっています。
下の図にもあるように、直近高値=88.40円というのは前述した第1波の値幅に黄金分割から導かれる値のひとつ=1.382を掛けて12年9月安値に足した値=88.39円に程近く、同水準は「ひとつの節目」と考えられます。ちなみに、12年9月安値からの上昇が第3波であるとするならば、少なくとも第1波の値幅を1.618倍して12年9月安値に足した値=90.30―40円あたりが中期的な目標となるとの見方は変わりません。
ただ、目先的な過熱感が強いことと、前述した一つの節目に到達したことで、当面はある程度の調整もあり得るものと考えておくことが必要でしょう。では、どのあたりの水準が当面の下値メドとして想定されるのでしょうか。それは、一つに上図に示したボリンジャーバンド(21日線を基準とする)の+1σのレベルと考えることができるものと思われます。振り返れば、12年12月12日に同水準を上抜けて以来、この+1σの水準がドル/円の下値を支持してきたものと見られます。
仮に、この+1σの水準を明確に下抜けた場合には、やはり21日線までの調整を想定しておかねばならなくなるでしょう。それでも、基本的にドル/円の下値は自ずと限られるものと思われます。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役