ついに、ドル/円が今年3月高値を上抜け、年初来の高値を更新してきました。先の衆院選の自民圧勝という結果を受け、もはや「安倍政権」発足間近となった今、市場では「安倍政権に対する国民の期待を日銀も無視することはできない」との見方から、大きな流れは円安という方向性が日ごとに強まっているようです。

これまで、本欄では「今年2月安値を始点とする新たな5波構成の強気相場が展開されている」との見方をメイン・シナリオとし(2012年10月24日更新分参照)、9月13日につけた安値=77.13円が「第3波」の始点になったと想定してきました。

セオリーによると、この第3波は全5波のなかで最も大きく(値幅)、長い(時間)とされており、その「大きさ」は少なくとも第1波(この場合、今年2月安値から3月高値までの値幅)の1.618倍程度になるとされています。つまり、計算すると当面の目標値は90.30円あたりということになります。

それでは、この目標値(場合によっては一段と上の水準になる可能性もあります)に到達するのは、一体いつごろと見たらよいのでしょうか。これまで本欄で幾度か述べてきたように、過去のドル/円の価格推移には45-50週ごとに当面の安値をつけて反発するという一つのサイクルが確認できます。下の図を見てもわかるように、最も近いサイクルの終点は今年9月に安値をつけたときであり、同時にそこから新たなサイクルがスタートしていると想定すれば、一旦反発してどこかで当面の高値をつけ、次に安値をつけに行くのは9月に安値をつけた週から45-50週後ということになります。

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もちろん、今考えたいのは次に安値を付けるときではなくて、その前に一旦高値をつけるときです。それは、単純に考えれば45-50週のハーフ・サイクルにあたる23-25週後ということになるわけですが、ことはそう単純でもなさそうです。

あらためて上の図を見てみますと、11年10月に安値をつけるまでの各サイクルでは山の頂点=サイクル高値をつけた時点が、例外なく向かって「左寄り」になっていることが確認できるはずです。これは下げ基調が強いときの典型的なパターンで、この場合、安値は段階的に切り下がって行きます。ところが、11年10月安値から12年9月安値までのサイクルでは、山の頂点が少し「右寄り」となっており、しかも11年10月安値より12年9月安値の方が水準は切り上がっています。まさに、これは相場の基調が転換した可能性を示す重要なサインなのです。

仮に、もはや相場が上げ基調に転換しているとすれば、今後の山の頂点は徐々に右寄りになって行くはずであり、12年9月を始点とする新たなサイクルにおいても、その頂点は始点から23-25週後よりも少し先にずれることになるものと見られます。

つまり、それは来年の3月中旬~4月ごろにかけてということになるわけです。ここで見逃せないのは、奇しくも来年3月に日銀副総裁、4月に日銀総裁の交代時期がやってくるという事実です。周知の通り、自民党の安倍総裁は日銀の正副総裁人事についても積極的に関わって行く意向を明らかにしています。次の日銀正副総裁が、安倍氏の言う「大胆な政策に理解のある(=インフレターゲットに賛成する)人」となるのかどうか、さらに実際の政策論議に変化が生じるのかどうか、市場の思惑がこの時期に向けて大いに盛り上がることは間違いなさそうです。

コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役